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13.修学旅行一日目 10
誰にも聞かれたくない話なのか、内川は非常階段の踊場まで俺を連れて行く。
内川の表情は硬く、何処と無く落ち着かない様子で。
「あのさ、柏木に聞いておきたいことがあるんだ」
「な、なんだよ」
内川のこんな真剣な顔は見たことがないので、こちらも構えてしまう。
そして、しばしの沈黙……。
何の話をするつもりなのか?
全く想像つかず固唾をのんで見守っていると、内川が真剣な面もちで話し始めた。
「あのさ……。お前は本当に塚本さんのことは何とも思ってないのか?」
「え、うん…………」
────ん!? 塚本?
んんん!?
「はぁ? つ、塚本? 何とも思ってないけど……えっ! まさかっ! え⁉︎ えぇ⁉︎」
「驚きすぎだし」
「いや、え、まじか!」
内川の言わんとすることを俺が察すると、急に内川の顔が赤くなっていく。
「俺、告白しようと思うんだ。でも彼女は柏木が好きみたいだし見込みねえけど、修学旅行記念に」
「修学旅行記念って何だよ! つか、塚本ってまじか!?」
「うん。可愛いから」
あいつは腐女子なんだぞ。って、……俺の口からは言えねえけど。
いや、この場合、腐女子は関係ないよな。
それに内川は、前から塚本の腐発言も不思議系で可愛いって言ってたし。(内川は意味わかってないと思うけど)
「頑張れよ! 応援するし。それに塚本が俺のこと好きとかもマジでないから。それだけは断言出来る」
とにかく、内川が塚本に修学旅行中に告白するらしいので、うまく行くことを願うばかりだ。
「で、具体的にはいつ告白するんだ?」
非常階段から部屋へと戻りながら俺が聞くと、ソワソワした感じで落ち着きのない内川は頭を掻きながら答える。
「明日か、明後日」
「明日って1日自由行動の日じゃん」
「つか、柏木は塚本さんがどこに行くか知らねえ?」
「知らねえよ」
内川が俺のジャージの裾を握って問いかけた瞬間、ガサガサと何処からか物音が聞こえた。
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