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13.修学旅行一日目 11
ガサガサと音がした。しかも内川が俺のジャージの裾をつかんだ瞬間に。
ん? この感じは……。
「なぁ、内川。ちょっと俺の腕を掴んでみろよ」
「え?」
「いいから掴めって」
そして、内川が俺の腕を掴んだ瞬間、またガサガサガサッと音がした。
間違いない。あいつだ!
「塚本だろ! どこにいるんだ出てこい」
「人違いです」
「いいから出てこいよ」
ちょうど良いところで観察中の塚本を発見した。
塚本は見つかってしまって残念そうな顔をしながらこっちに向かって歩いてくる。
ちょうどいいから俺は内川に小声で、「自由行動の予定を聞け」と言った。
「今日は密会なんだね~」
「そんなんじゃねぇから」
まためくるめく妄想を繰り広げていた塚本に違うと言っても聞きやしないんだろうけど。
すると内川が塚本の目の前に立って拳を握りしめた。
「塚本さんの班は明日、どこをまわるの?」
「私たちは北野天満宮に行くんだよ。そっちは?」
「俺達は清水寺から祇園とか河原町に行くんだ」
「いいなぁ。本当はね、私も祇園に行きたかったの。あ、そうだ!」
そう言うと塚本はポケットを探ってメモ帳に何かを書き始める。
「あのね、もし祇園で時間があったらここの特選の抹茶カステラを買ってきて欲しいんだけど……」
渡された紙には店名と商品名が書かれていた。
「ここ有名なの?」
紙を横からみた俺が訊ねると、塚本の目がキラキラと輝き出す。
「とっても美味しいんだって! 甘味屋さんが2階にあっていつも行列らしいよ! 私、ずっと食べてみたかったんだけど自由行動では北野天満宮に決まっちゃったから……時間があったらでいいか…」
「俺が買ってくる‼︎」
塚本が言い終わる前に叫ぶように言ったのは当然内川なのだが、それを聞くと塚本の顔がまたパァッと華やいだ。
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