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13.修学旅行一日目 12
塚本は嬉しそうな表情をしながら、ポケットから財布を取り出した。
「ありがとう。ちょっと待ってね、先にお金を渡しとくから」
「そんなんいいよ」
「駄目だよ。1箱千円くらいするんだから」
「別にいいって」
しばらくこの押し問答が続いたのだが、最終的には内川が立て替えておいて後で塚本が払うということで塚本は納得したようだ。
とは言っても、内川は塚本に金を出させるつもりはないようだけど。
とにかく内川は塚本とまた喋る口実が出来てとてもうれしそうだった。
少し話していると塚本が友達に呼ばれて行ってしまう。
塚本がいなくなると内川はふぅーっと大きく深呼吸をした。
「うわー、緊張したー」
告白すると意識し始めたからだろうか、いつも以上に内川は緊張していたようで。
「こんなんで緊張してて、告白なんか出来るのかよ?」
「だって、告白とかしたことねえもん。前、付き合ってたのも向こうからだったし」
そういう事なら、ここは告白のプロの俺が告白初心者の内川にアドバイスでもしてやろうじゃないか。
「告白スキルなら俺のが上だな! なんでも聞けよ」
「柏木の場合は回数だけな。それに、フられる告白スキルだろ!」
「なんだとテメー」
内川はケラケラ笑うと、塚本にもらった紙に視線を移した。
「……で、この店ってどこ?」
「えぇー! 知らねえよ。なんでさっき塚本に聞いとかねえんだよ」
「タイミングがズレた。みたいな」
みたいな。じゃねえじゃん。
そこめちゃくちゃ大事なところじゃん。
今更、場所を聞きに塚本を追いかけては行けないし……。
ガイドブックで探すか。修平が持ってたし。
「しょうがねえ。修平のガイドブック見せてもらって探そう」
「僕がどうしたの?」
「わ──!!」
修平の話をしていたら、突然、後ろから本人の声が聞こえてきたので俺も内川も思いっきり驚いてしまい同時に叫び声をあげていた。
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