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13.修学旅行一日目 13

「なんか心外」 修平はとても不満げに言った。 「ごめん。驚いて」 「で、僕がなに?」 「お前が持ってる京都のガイドブックみせて欲しいんだけど」 「いいけど。明日のこと?」 ガイドブックが必要と言ったので、俺たちは部屋に向かいながら。 「祇園のこの店を探すんだ」 と、修平に塚本から貰った紙を見せると、修平は「知ってるけど」とあっさり言った。 ガイドブックを見るまでもなく目的地発見。 「つか、なんで知ってんの?」 ただ単に疑問に思ったことを修平に投げかける。 「祇園に行くなら寄ろうと思ってたから」 「なんで?」 「カステラ買うため」 「姉ちゃんへのお土産?」 「いや、僕の」 「カステラ好きなの?」 「甘いものはみんな好きだよ」 えっ? ええっ? なんだって!? 修平の返答に内川は頷いているだけだったけど、俺は少しだけ混乱していた。何故ならば。 ──アマイモノハミンナスキダヨ? 甘いものはみんな好きだと!? そんなん初めて聞くんだけど! 部屋に戻って内川にガイドブックを渡すと、俺は修平の手を引いて人の少なそうな場所に向かった。 「おい! さっきの話は本当かよ」 「さっきのって?」 「甘いものが好きって話だよ」 「本当だけど。言わなかった?」 「聞いてねえ!」 俺がブツブツ言いながらしかめっ面になっていると、修平はポンと手を叩き小声で囁く。 「心配しなくても一番は千秋だよ」 「そんなことじゃねー!」 修平と付き合ってだいぶ経つのに甘いものが好きってこと……知らなかったことがショックだった。 「俺の好きなもの知ってる?」 「オムライスとマフィン」 修平は俺の好きなものを知ってくれているのに! 俺は何も知らなかったし、聞いたこともなかった気がする。俺、ダメダメじゃん。 そーいえば……。修平はマフィン以外にもよくスイーツを作ってくれた。 シュークリームとか絶品だったし。メロンパンとかも作れるし。 最初にマフィンをもらったとき、俺に食わせたいからと言われて、俺も甘いのが好きだったりするから。 だから作ってくれてたのかなって思ってたけど。 もしかして……。

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