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13.修学旅行一日目 14
「修平がお菓子作るのって甘いものが好きだから?」
「うん。それもあるけど」
なんだよ俺、自分の為に作ってもらってるとか、自惚れじゃん。
なんで気付かなかったんだ俺!
修平は付き合う前から菓子作り上手かったんじゃん、考えればわかったのに。
頭を抱えていると不思議そうな顔をして修平が俺の顔をのぞき込んできた。
「どうかした?」
「俺、知らずに自惚れてた……」
「ん?」
修平は首を傾げたけど、俺は自分の自惚れのせいで盛大な勘違いをしていたことが情けない。
「ごめん。修平……。修平は自分の好きなお菓子を作ってたのに、俺の為に作ってくれてるとばかり思ってたから、修平が甘いもの好きって気付けなかった」
「…………」
修平はしばらく固まったみたいになって何も言わなかった。
そんな沈黙が続くと、突然、修平は何も言わずに俺の手を引っ張って俺は本日2度目の非常階段へ。
そして、そのまま人気のない上の階まで手を引いてのぼっていく。
一番上まで来て、修平が振り返ったかと思うと、ぎゅーっと強く抱きしめられた。
「えっ? えっ?」
俺が戸惑っていると、修平が抱きしめたまま言った。
「千秋、可愛すぎるよ。我慢出来なくなる」
「はぁ? 何が!」
「僕も甘いもの好きだけど、僕が作ってたのは千秋のため。美味しそうに食べてくれるから作ってるんだよ。そんなことで悩んでる千秋にキュンとした」
「俺の、ため? 本当?」
「本当。全部、千秋のため」
“千秋のため”と、抱きしめながら修平が言ってくれるとホッとするとともに嬉しさがこみ上げてくる。
それに、こうやって抱きしめられてるのもすごく幸せ……って。
ここ非常階段!
修学旅行中だし、いくら人気がないと言っても、いつ誰が来るかわからないんだぞ!
「修平、忘れるなよ。今は修学旅行中だ」
「知ってるよ」
「人が来たらどうするんだよ」
「それは困るね」
「だったら離れろよ」
「キスしてもいい?」
「会話が噛み合ってないのは気のせいか?」
修平は俺を抱きしめたまま離れようとしない。
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