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13.修学旅行一日目 15

付き合ってから知ったことだけど、たまに修平はこんな風になる。 修平の方が背が高いくせに俺の首筋に顔を埋めたままぐりぐりと擦りつけてみたり。 必要以上にベタベタしてきたり。甘えたような態度を取ってみたり。 普段の修平は完璧が歩いているような感じでどちらかと言えばクールに振る舞っている。 俺だってそう思ってたからいけ好かなかったわけだ。 でも実際は……。 「千秋、キスしたい。してくれたら離すから」 突発的にこの甘えたモードが出たらしい修平は、駄々をこねるようにぐりぐりと俺の首筋に額を擦りつけた。 「お前って、たまに甘えたになるよな。お前のファンがみたら泣くぞ」 「千秋にだけだよ。千秋にしか見せない」 「今までの彼女にも見せたことない?」 「ないよ。千秋だけ」 俺はたまに女々しくてウザイことを聞くと思う。 でも、修平はそのたびにちゃんと答えてくれるから安心するんだ。 「修平、わかった。キスしよ……」 誰かが来るかもしれない非常階段で、俺たちは唇が触れるだけのキスをした。 少し唇が離れると、もう1度……俺たちの唇が重なる。 お互いに深いキスをしたら、我慢ができなくなるのがわかっていたんだと思う。 ……だから触れるだけ。 そんなキスが終わると修平はもう1度だけギュッと俺を抱きしめると約束通り俺のことをはなした。 でも、修平の温もりが遠ざかるとどこか切ない感じがして。 「離れるとなんか寂しいな」 ボソッと俺が呟いた言葉は修平にも聞こえてしまっていたらしく。 修平はにっこり微笑んでいた。 「千秋に甘えたがうつっちゃったかな?」 「バカヤロウ……」 「千秋も僕以外に甘えたら駄目だよ」 こうやっていると本当に幸せで、こんな時間が永遠に続いたらいいのになぁ……なんて思うんだ。 「とにかく、俺はお前のことをもっと知りたい! 知らないことがあったら悲しいから」 「本当に千秋は可愛いことばかり言ってくれるね」 「だから、お前のことをもっと教えろ」 「なんでも聞いていいよ」 でも、なんでもと言われると、何から聞いたらいいんだろう。 好きな色とか? いや、そんなの中学生でも言わねーよな。 「また聞きたくなったら聞く」 非常階段から部屋に戻るまでにいろいろ聞くはずが、なかなか良い質問が浮かばないまま部屋に着いてしまった。

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