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13.修学旅行一日目 16
部屋に戻るとガイドブックを読み込んでいた内川が顔をあげた。
「どこ行ってた? トイレか?」
「うん、まぁ……」
俺が話を濁すと、修平がお店は見つかった? と内川に聞いて話を逸らす。
「カステラ買ってきたら塚本さん喜ぶかなぁ」
「え? 塚本さんにカステラ買うの?」
そう言えば修平にはまだ塚本に告白することを言ってなかった内川は、ハッとした顔をして軽く頷きことの成り行きを小声で修平に説明していた。
「なぁ、新藤はうまく行くと思う?」
「勝敗を分けるのは……懐の大きさかな」
「え? それってどういう意味?」
修平が言っているのは、塚本の趣味を内川が受け止められるかってことを言ってるのだろう。
「どんな子だったとしても、そのまんまの塚本さんが好きだー! とか言えばいいんじゃないの?」
「おぉー、なんか新藤にアドバイスもらったら行ける気がしてきた」
その言葉に少しイラッとする。
「おい、内川! 俺のアドバイスは聞こうとしなかったくせになんだよ!」
「だって、柏木はずっとフられてただろ」
「うっ……」
言い返せないのが悔しい。
すると何かを思いついたように、目をキラキラさせた内川が修平に聞いた。
「なぁ、新藤。お前はどうやって告白したんだよ」
「え? 僕?」
「そう、彼女には新藤の方から言ったんだろ?」
「うん。そうだけど」
また嫌な流れだ……。
いつものことなのだが、内川にとって新藤は恋愛の師匠なわけで、こういった話になると妙に生き生きしてくる厄介な奴だ。
「参考にさせてくれよ」
「えー、僕の話なんて参考になるかな?」
参考になんかなるかよっ!
と、思ってもいつも俺の心の声は届かない。
それどころか……。
「え! 新藤の告白の仕方? 俺も聞きたい!」
「俺も! 俺も!」
と、同室の奴らまで聞きたいとか言ってきやがったし。
「柏木も参考にしてみれば?」
って、言われたのは俺だからな! とかも叫べねーし……。
そうやってあたふたしてる俺を見て、ニヤリと笑った修平。
……これは言う気だな。
あの顔はまた面白がってやがるに違いないのだ。
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