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13.修学旅行一日目 17
すると同室の1人がまた修平に尋ねた。
「でも新藤なら言うだけでオッケー貰えるんだろ?」
すると今まで小出しにいろんな事情を聞いてきた内川が得意げに答える。
「いや、今の彼女に1度は断られたらしいぞ!」
新藤修平が断られたと聞いた奴らは一気にヒートアップしていく。
「マジか! ますますどんな子か見てみてぇ」
悪いな。俺だよ……。
呆れながら小さくため息をついていると、また部屋の中は修平がどんな風に告白したのかと盛り上がり始めた。
「そんな照れるんだけど」
「教えてくれよ。断られた後、どうしたの?」
「えー、恥ずかしいな。普通だと思うけど」
修平はそんな気なんかないくせに、恥ずかしいから言いたくない的な勿体ぶった態度をとると、重たそうに口を開いた。
それは今となれば懐かしいような話で……。
今更何を言っても修平は話すだろうから、俺も修平の話を聞きながら思い出していた。
「一緒に遊園地に行ったんだ」
って、俺とマリエちゃんのデートについてきたんだろ。
「暗くなるころに観覧車に乗って……ゲームと称して……」
みんな前のめりになり話を聞いている。
「……キスしたわけ」
「おぉー!! それから、それから?」
かなりみんな食いついてるし。
「それから僕の家に行って」
「もしかしてヤッたのか!?」
いや、ヤッたけどさ……。
「まずは料理を振る舞った」
「えっ! 新藤が作るのか? 女の子の手料理じゃなくて?」
「ここは攻めるとこだからね」
「ほー」
「それで、ご飯食べたら1晩中好きだ好きだって言い続けたんだ」
かなり最後のほう掻い摘んでだけど、みんなはへぇーと声をあげながら今にもメモとか取る勢いだった。
「いいよなぁ。俺も彼女がほしい! そんでイロンナコトするんだ」
そして高校生男子らしい妄想に花を咲かせている同室の奴らの横で、内川は拳を握りしめて決意を固めたように見えた。
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