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14.修学旅行二日目 8
俺が駆け寄ると修平は不思議そうな顔をした。
「どうしたの?」
「お前がいないから探しにきた」
そう言うと修平はにっこりと微笑んで俺の手を引いて歩いていく。
「どこいくんだ?」
「千秋とゆっくり喋れるところを探そう」
少し歩いていくと、さらに入り組んだ路地へと入り、行き止まりになっている所を見つけると修平が振り返って俺の顔を覗き込んだ。
「なんか浮かない顔をしてるね? 寂しかった?」
「ちげーよ!」
素直に寂しかったと言えばいいのに、また強がってしまう。
さっきの修平が店員に見せた笑顔にモヤモヤしてる自分も女々しすぎて嫌になる。
俺がそんなことを考えていると、優しく微笑んだ修平が俺の手をとった。
「これ、プレゼント」
手のひらには、銀色のキーホルダーが置かれた。
キーホルダーにはひし形のモチーフが付いていて、片面には黒を基調としたシックな模様が入った布みたいなのが貼り付けてある。
「これ何?」
「ちりめんっていう織物のキーホルダーだよ。珍しいからさっき買ったんだ」
「俺にくれるの?」
「実は僕も同じのを買ったんだ。お揃い」
修平は自分のキーホルダーも見せながら言う。
修平とお揃いとかすげー嬉しい。
すると修平はにっこりと笑いながら俺のキーホルダーのモチーフに触れた。
するとそのひし形の部分がスライドするようになっていて、中には“Shuhei&Chiaki”と文字が彫られていた。
もしかして修平の持っている方にも文字が彫られているのかと思ってスライドさせてみると……。
こっちは、“Chiaki&Shuhei”と彫られていた。
「このモチーフ。スライドしないと中身がわからない。秘密の文字って僕たちにぴったりだろ?」
「……すげーうれしい」
「気に入ってもらえてよかった」
「もしかして、さっきいた店で買った?」
「そうだよ」
だから修平は笑顔だったんだなって、納得していると修平に顔を覗き込まれた。
「どうかした?」
「な、なんでもない」
そう否定したけど、修平はどこか不満げだった。
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