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14.修学旅行二日目 9
修平が店員に笑顔だったのが気になったなんて、そんな事言えないから話を逸らそうとしても、修平はなかなか納得しない。
「さっき、浮かない顔してたのと関係ある?」
「ねーよ!」
「教えてよ」
そう言いながら俺を行き止まりの壁際に追い詰めた。
「別に何でもないって言ってんじゃん」
「何でもないって顔じゃなかったよ」
「…………」
一向に埒があかなくて俯けば、修平が俺の髪に触れてまた顔を覗き込む。
「どうして、そんな顔してるの?」
修平はなぜか捨てられた犬みたいな顔をしてて。
なんで、お前の方がそんな顔してるんだって言いたくなる。
でま、そんな表情に心がちくりと痛んで根負けしてしまった俺は、本当は言いたくないけど、できるだけ小さな声で呟いた。
「いや……さっきお前が店員にすげー笑顔だったから気になった……だけ……」
俺が言い終わると修平がクスクスと笑い出した。
そして俺の頭に手を回して引き寄せると、チュッとリップ音がするキスを頬に落とし、またニッコリと微笑む。
「千秋は可愛いなぁ」
「ど、どこがだよ」
「僕のちょっとした仕草とか言動で心配したりするところ」
「嫌じゃないのか?」
「嫌なわけないよ」
優しい顔で言ってくれる修平を見ていると胸がギューッと掴まれるように熱くなる。
ヤバいよ。めちゃくちゃ嬉しい。
でも、俺ってやっぱりめんどくさい男だって思うんだ。
「修平は俺がウザイこと言い出しても嫌いにならない?」
「ならないよ」
「……修平は優しいんだな」
修平はこんなに優しいのに、俺はダメだなぁって目を伏せると、修平は少し焦った様子でまた俺の顔を覗き込んだ。
「どうしたの? 急に」
「俺、ダメだな……」
「どういう意味?」
「……だってさ、俺ってたまにウザくて女々しいこと聞くじゃん」
「そうかな?」
「今まで修平が付き合ってきた彼女と比較したりとかさ……」
すると修平はまた優しく微笑んで、俺の頬を指の背で撫でながら言ったんだ。
「それだけ僕のことが好きなんだろ?」
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