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14.修学旅行二日目 11

なのに、修平の冷たくなった指が触れる場所が、なんでか熱くなってきて気持ちよくて流されそうになってしまう。 「…あっ、待て……んぁっ……」 でも俺はこれ以上、お前に不正を犯させたくないのに。 俺だってお前とこのまま誰に邪魔されることもなく抱き合っていたいけど。 でも……、ぐっとこらえて修平の肩を押し返した。 「修平ダメだ! 俺は! これ以上、俺のせいでお前に不正をさせたくない!」 大きな声を出したことで、呆気にとられた顔をした修平は、俺から少し顔を離すと首を傾げた。 「不正?」 「お前はさ、部屋割りとか座席とか無理して変えてくれたんだろ? 俺の為にしてくれたことはわかってるし、嬉しいんだ。だけど、その為にその都度言い訳考えさせてるんだって思ったら、なんか……悪い気がする」 尻すぼみな声と比例するように、いつの間にか俺も俯いてしまっていた。 でも、俺が言い終わっても修平は何も言わなかった。 さっきので、うまく言えただろうか。ちゃんと伝わっただろうか。 修平の反応が気になってしょうがない。 修平はどんな顔をして聞いてたのだろう。 こんなことを言ったら修平はガッカリするだろうか。 俺に幻滅してしまうだろうか。 いろんなことが頭の中を駆けめぐり、胃まで痛くなりそうな気さえするような……。 こういう時の沈黙というのは、永遠に感じるほどに長い。 あまりにも修平が何も言わないので、やっぱり呆れて嫌われたか? と思いため息をついた瞬間、修平が俺の額に軽いキスをした。 そしてそのまま俺のことを抱きすくめると、何故かハァーっと大きく息を吐く。 不安になって顔を上げると、修平は眉尻を下げながら困ったように笑った。 「ごめんね。千秋」 「……なんで、修平が謝るの?」 「僕は自分のことばかり考えてたみたいだ。僕は千秋のことになると抑えがきかないよ。……千秋はこんなに僕のことを考えてくれてるのにね」 そう言うとまた俺のことをぎゅっと強く抱き締めた。 呆れられたかと思ったが、むしろ逆のようで意外な返事に戸惑いながらも嬉しく感じる。

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