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14.修学旅行二日目 14
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「おー、来た来た! 新藤も柏木も、勝手にどっか行くなよ」
「ごめん。路地裏入ったら迷った」
あははと笑いながら、俺たちはみんなと合流した。
お互いの鞄につけたお揃いのキーホルダーと、秘密のキスは京都2日目の一番の思い出になった。
集合場所からはクラスごとのバスに乗り込んで、席に座ると修平に聞きたかったことを思い出す。
「なぁ、修平の誕生日っていつ?」
「えっ……」
気のせいかもしれないけど、一瞬だけ修平の顔がこわばったような……そんな気がした。
だからだろうか、修平は何も言おうとしない。
「なぁ、いつなんだよ」
いつまでも修平がそうしているので、再度催促すると、物凄く言いにくそうにしながら修平はやっと重い口を開いた。
「怒るかもしれないけど、……9月28日」
「なんだよ、怒るって……って、もう過ぎてんじゃん!? なんでもっと早くに言わないんだ!」
「だって“もうすぐ誕生日なんだ”なんて自分から言うのは、催促みたいで恥ずかしいだろ?」
そう言うと修平はまた制服に隠した俺の手を握りながらぷいっとそっぽを向いてしまった。
いやいや、誕生日くらい言えよ。
「そんなこと言ったって誕生日は年に1回しかないしお祝いしたかったし、プレゼントとかもあげたかった。……付き合って初めての誕生日……だったのに」
俺が修平だけに聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声で呟くと、振り向いた修平がそっと俺に耳打ちする。
「言わなくてごめんね。でも誕生日になる瞬間から千秋と一緒にいたよ」
「ほんとに?」
「うん。それから一晩中千秋をいただいたし」
ニヤッと笑いながら言う修平をみて、カァーっと自分の顔が熱くなるのを感じる。
「僕の17歳は千秋から始まったんだ。だから千秋の17歳も僕からね」
「もしかして俺の誕生日知ってたりする?」
「前に先生が持ってる資料でみたから知ってる」
「ずるいぞ!」
俺が軽く膨れて言うと修平は目を細めて、クスっと笑いながら俺の手をギュッと握った。
「いいの。千秋は黙って僕に愛されてたらいいの」
そして、そう言うと修平は誰にも気付かれないように素早くチュッと啄むようなキスを落とした。
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