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14.修学旅行二日目 15
そのキスは完全な不意打ちだった。
「お、お前……ッ!」
すると修平はまた人差し指を立てて口元に当てる。
「わかってるから」そう囁くように小さな声で言いながら、目を細めた。
ここはバスの中なんだ。クラスの皆んなが乗ってるし、誰に見られるかもわからないのに。
でも、走るバスの一番後ろの席で俺達だけが異空間にいるような、そんな感覚に陥ってしまうくらい。
このキスが特別で、目を丸くする俺に微笑みかける修平が特別で。
余計に、自分の誕生日がめちゃくちゃ楽しみになったんだ。
まだまだもう少し先だけど、俺の17歳も修平から始まるのかな? ってそう思ったら、恋人と過ごす誕生日ってこんなにワクワクするのかって想像してみたりなんかして。
「見られても知らねーぞ」
あいも変わらず裏腹に悪態つくことしかできない俺に微笑みながら修平は「ごめんね」と言って、また制服の上着に隠れて握り合ってる手に力を込めた。
そして修学旅行の2日目も終わろうとしている。
俺はお手軽だから修平にキーホルダーを貰っただけで修平に群がる女子たちが気にならなくなった。
悪いな、ソイツは俺のだ。
フフン。
でも夜が更けていくと不意に思い出してしまう。
『ホテル、行く?』
とかあのキスとか、首筋を這う舌の感触とか。
あの時の修平の声は艶っぽくてドキドキした。
マジでエロかったし……。
つか、思い出しただけでも勃ちそう……頑張れ、俺。
あと1日なんだから。
すると俺の頭の中の悪魔と天使がいざこざをはじめた。
悪魔な自分が、あのままホテルに行ってたらこんなに悶絶しなくて済んだのにと言う。
でも天使の方は、相手を思いやった君は偉いと言う。
寝返りをうつと、修平の寝息が聞こえて寝顔が見えた。
自分から言ったことなんだからしっかりしなくては!
やっぱり2日目の夜も修行のような夜になったわけだ。
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