すると塚本は大きなため息をついた。 「柏木くん総受けの話を書いてるのにいつの間にか内川くん総攻めになっちゃうなんて……」 結構、塚本ってディープなの書いてるんだな……。 少しだけ物語を想像しかけて寒気がしたが、いつの間にか内川総攻めになるって内川のことを考えてるからじゃないかって思うんだけど。 「なんで俺は受けなのに内川は攻めなんだよ！ 不公平だ！」 「だって柏木くんは可愛い系だもん。内川くんは……」 そう言いかけた途端、塚本の顔がどんどん赤らんでいくのがわかった。 「要は塚本だって内川が好きなんじゃねえの？ 内川のこと考えてるから頭の中の話に割り込んでくんだよ」 すると目を見開いて茹で蛸のような顔をした塚本が俯きながらプルプルと震えだした。 なんだ、こいつら両思いなんじゃん。 でも塚本にとっては物語が書けないことも一大事なわけで。 「私の夢はＢＬ作家なの！ 今はまだ素人だけど、素人だからって今書いてるのを投げ出したくない！」 すると塚本は俺の両肩を掴むと大きな声をあげた。 「だから、柏木くん。協力して！」 「えっ？ えっ？ 協力!?」 「もうすぐ完結だから、完結まで集中的に観察させて！」 「は、はぁ!?」 「こんな中途半端な状態なんて内川くんにも悪いし、完結させたら私は生まれ変わって内川くんの小説を書く！」 お、俺……なんか、超巻き込まれてる気がするんだけど、全然話の流れに乗れてねぇ……。 な、なんだ？ 今の話を書き終わるまでは駄目ってこと？ 二股はしないみたいな？ でも小説でどこまで生真面目なんだよ！ 「それはさぁ……今書いてるのが終わったら内川と付き合うってこと？」 と俺が聞くと塚本は頭に血が上ったのか、久しぶりに鼻血を吹き出した。 フラフラした塚本は鼻血をティッシュで拭い、照れながらもじもじしている。 「……内川くん。待っててくれるかな？」 いやいや、待つだろうよ！ つか、俺が待つように言うし。 なんか俺がモデルだって小説書かれるのも観察されまくるのも複雑だけど……これも親友のため。 そう思わなきゃやってらんねー!!