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16.心からのギフト 7

でも自然と大きなため息が出てしまう。 それでも親友のためなんだと何度も頭の中で繰り返し言って、仕方なく頷いた。 「わかったよ……。でも、学校始まってからな」 「うん。ありがとう! 私が勝手に観察するから柏木くんは普通にしててくれていいし」 って言われてもなぁ。やっぱり複雑だ。 「なぁ、それってさ、観察しなきゃいけないものなの?」 「私はそういうスタイルだから」 「そういうスタイルってどんなスタイルだよ! 答えになってねぇーよ!」 「じゃあ、学校始まったらよろしくね!」 「お、おい! ちょっと……」 そう言って手を振り走っていく塚本は、憂鬱な思いを抱いている俺のことなど気にもせず、来たときとは打って変わって軽い足取りで帰って行った。 「ただいまー」 俺が帰ると玄関でニヤニヤしている母さんに出迎えられた。 「さっきの子彼女?」 そんなことをいきなり聞いてくるから、靴を脱ぎながらこけそうになる。 「ちげーよ」 「照れなくてもいいのに。可愛い子だったわね〜千秋もやるわね!」 「マジで違うし。あいつは友達の彼女(になるやつ)! 相談があるって来ただけだし」 すると母さんはあからさまにがっかりした顔をした。 「なーんだ。友達の彼女かぁ」 つまらないとでも言いたげな背中を向けて台所に戻っていく母さん。 なんだよ! その憐れむような顔はっ! 俺には修平っつー恋人がいるっつーの。 母さんの態度にむかっとしながら、部屋に戻ってまたベッドに寝転がる。 そういえば今日のことは内川に言った方がいいんだろうか? 休み明けから集中的に観察されるってことは、必然的に俺たちの前に塚本が現れる機会も増えるってこと。これって絶対、内川勘違いするんじゃ……。 でも、待っててくれるかな? とは聞かれたけど気持ちを言ってくれとは言われてないし。 自分の気持ちとかって自分で伝えたいだろうしなぁ……。 でも暗い気分で過ごしてるであろう内川のことを考えると。 うーん、難しい。 明日、修平に相談してみようか。

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