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番外編③ 僕だけの可愛い人 6
ガチャッと脱衣所のドアが開かれた。
僕が振り向くと、そこには千秋が立っていて……。
でも、なんか様子がおかしい。
千秋は今にも泣きそうな顔をしていたのだ。
そんなことを感じとっていた次の瞬間、泣きそうな顔の千秋が飛びつくようにして僕に抱きついてきた。
「しゅうへい、いたぁ……」
「ち、千秋?」
舌足らずな喋り方にも違和感を覚える。
そして、そのあきらかに様子のおかしい千秋は僕にくっついたまま離れようとしない。
「どこに行ったのかと思った」
「風呂に入ってただけだよ」
その目は潤んでいて、上目遣いなんかされると可愛すぎなんだけど、でも変だ。
風呂に入るのは知ってただろう?
やっぱり普段の千秋とは喋り方から態度まで何から何まで様子がまるで違う。
でも、ここは浴室の脱衣所だ。
とりあえず部屋に戻ろう。考えるのはその後だ。
「まずは部屋に戻ろうか。服着るから離れて」
そう言ったのだけど、千秋は大きく左右にかぶりを振る。
「ヤだ! 離れない」
「嬉しいけど、服だけ着させてよ」
「イヤ!」
子供返りしたような千秋は甘えるように僕に擦り寄って離れようとしない。
しょうがないので千秋がくっついたままスウェットの上下をなんとか着て部屋に帰ろうとすると、今度は千秋が僕の腕をぎゅっと掴んだまましゃがみ込んでしまった。
「今度はどうしたの?」
「しゅうへい、だっこ……」
そう言うと僕に手を伸ばしてだっこをせがんできたのだ。
やっぱり、今日の千秋は変だな。
ソワソワしてたのはこのせい?
でも、千秋が素面の状態でするとは思えない。
……素面の状態で?
…………ん!?
まさかとは思ったけど、確かめるには部屋に行かないといけない。
だっこはさすがに重くて階段を上れないので、おんぶで許してもらい千秋をおぶって自分の部屋へと向かった。
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