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番外編③ 僕だけの可愛い人 7
おぶるとご機嫌になった千秋は、僕の首筋にすり寄り何故か匂いを嗅いでるようだった。
「フフフ、おまえっていいにおいだな」
「そう? 同じ香りが千秋からもするよ」
すると同じという言葉が嬉しかったのか、僕の首の後ろあたりに千秋が急に顔を埋めると、鼻先が僕の首に触れた。
僕の家の石鹸とシャンプーを使った千秋からは見知った香りが漂っている。
恋人から同じ香りがするのって、安心するし幸せだなぁと感じる。
さっきから僕の首筋にぐりぐりと擦り付けながら顔を埋めている千秋も同じように考えていてくれたらいいなとか思っているとすぐに部屋に着いた。
部屋に入るとテーブルの上に空き缶が転がっていて、その缶をみて、僕はやっぱりかと思った。
「千秋、これ飲んだの?」
僕は千秋をベッドに座らせながら空き缶を指差して言うと千秋は頷きながら答えた。
「うん。おれ、ぶどうのジュース好き」
さっき喉が渇いていると言ったから、下の冷蔵庫からジュースだと思って出してきて飲んだのだろう。
でも、これはぶどうのジュースではなくて、姉貴が買ってきていた巨峰の酒だし……。
間違えて飲んでしまったんだとわかると、これで普段の千秋らしくない行動の謎が解けた。
飲み口が甘いから一気に飲んでしまったのだろうか?
缶は空っぽになっていた。
それにしても缶1本でこんなに酔っ払っちゃうなんて千秋って酒弱いんだな。
「しゅうへぇ……」
その空き缶を手に取ろうとしたとき、千秋が僕の腕に絡まるようにして見上げてながら僕の名前を呼んだ。
「何?」
僕が聞くと千秋は花が咲いたようににっこりと笑う。
「おれ、しゅうへぇにプレゼントがあるんだよ」
プレゼント?
そう言って千秋は自分の鞄をごそごそして僕に小さな箱を手渡した。
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