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番外編③ 僕だけの可愛い人 13

千秋を見ると僕に抱きつきながら泣いていた。 「ど、どうしたの! 千秋? どこか痛かった?」 いきなりの出来事で、思わずパニクってしまう。 もしかしてさっきのが乱暴すぎたんだろうか? 酔った千秋があまりにも可愛くて、つい調子に乗ってしまったし、それで千秋に痛い思いをさせてしまったのだろうか? 思わぬ事態に動揺を隠せず、泣いたまま何も言わない千秋が心配で顔を覗き込みながらもう一度尋ねた。 「さっきの痛かった? ……ごめん。大丈夫? もう君の嫌がることはしないから」 すると千秋は涙をいっぱい溜めた目で僕の目を見ながら違うと言う風にかぶりを振った。 「じゃあ、どうして泣いてるの?」 「…………」 だったらどうして泣いてるんだろうか。 今まで怒ることはあっても滅多なことで泣かない千秋が泣くなんて……。 理由が思いつかず戸惑うばかりで悪い方にばかり考えてしまう。 もしかして僕のことが嫌いになったとか? ……いや、推測はやめよう。 千秋の口からちゃんと聞かないと。 「お願い。理由が聞きたいよ」 すると千秋は泣きながら僕の唇に触れるだけのキスをして、ゆっくり口を開いた。 「……おれ…………しゅうへいが好きだから、嫌われたくない」 そう言うと、大粒の涙ぽろぽろと零した。 ……えっ!? 僕が好きだから嫌われたくないって、僕が千秋を嫌うはずなんてないのに。 「僕は千秋を嫌いになんかならないよ」 そう言っても千秋の涙は止まらない。 僕にしがみついたまま、声を詰まらせて泣いている。 その涙はすぐに引くことはなく、落ち着くまで僕はずっと千秋の頭や背中を撫でていた。 千秋は不器用だ。わかりやすい性格のようで、心の中にため込むことだって少なくない。 きっと僕が無意識に不安にさせていたのかもしれないな。 すると、泣きながら千秋が不安そうな顔で僕のことを見上げる。 「……俺、修平が大好きなんだ…ヒック……」 「うん、知ってるよ。僕も千秋が大好きだから」 「お前が思ってるよりずっと好きなんだぞ。……だから不安なんだ……ッ」 嗚咽が混じりながら懸命に話す千秋の目がそっと伏せられた。

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