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第17章 その目で見つめて 1

代休が終わり、また変わらない毎日が始まった。 俺としては自分の不甲斐なさを痛感した代休になっちまったってのに、修平はあの日から妙に機嫌がいい。 そんなにネックレスが嬉しかったのか? って聞くと修平はにっこり微笑んで頷いて、あの日から肌身離さずネックレスをしてくれていた。 もちろん学校にも付けて行くらしい。 なんだかんだそれが俺も嬉しくて、機嫌よく教室に行ったら内川が自分の机に力無く突っ伏していたので、思わず駆け寄ってその肩を叩いた。 「なっ、どうした!? 振られたのか!?」 「振られてねぇよ! ……たぶん」 「じゃあ、うまくいったのか?」 「わかんねぇ……」 そう言うと内川は机の中から1冊のノートを出して俺に見せた。それは、なんの変哲も無い大学ノートだったのだが。 「朝来たら机の中に入ってたんだ」 見せてくれるのかと思って手を伸ばすと、中を見せる気は無いようでスッと引かれてしまう。 そして、難しそうに眉間に皺を寄せると呟くように聞いて来た。 「なぁ、総攻めってさ……いい意味なのか? 悪い意味なのか?」 「なんだ? いきなり」 「いや、塚本さんがさ何を考えても俺が総攻めになるから話が書けないって。まずは今書いてる柏木くんの話を完成させるまで待ってほしいって……このノートに書いてあったんだが……」 塚本にとっては精一杯の返事だったのかもしれないけど……やっぱり回りくど過ぎると思う。 よし、ここは俺がフォローせねば! と思って内川の前の席に座った。 「塚本的には良い意味なんじゃね?」 「そ、そうなのか……?」 「内川さ、お前は攻めなんだろ? 俺なんて受けだ。想像すんじゃねぇぞ」 「しねぇけど。……BLって奥が深いよな」 内川はハァーと大きなため息をついた。 奥が深いのかどうかはよくわからないけど、腐女子との付き合いというのも大変そうだ。 だが、内川よ安心しろ。 塚本とお前は既に両思いなのだ。 本当は嫌だが、親友の為に塚本には俺の話とやらを書き上げてもらわなければいけない。

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