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17.その目で見つめて 3

あまりに突然すぎて一瞬にして固まる内川と俺。 そして、やっぱり柏木が好きなんじゃねぇか……と内川ががっくりと肩を落とした瞬間、塚本は続けて言った。 「……新藤くんと」 「え?」 ん? なんだって? そう思ったのは内川も同じだったようで、勢いよく顔を上げた。 俺は頭の中で復唱してみる。 『柏木くんデートして! 新藤くんと』 ────はぁ!? 「お、俺と修平がデートだと!?」 俺が叫んでいる横でほっと胸をなで下ろしている内川と、明らかに面白そうな顔をしてる修平。 すると塚本が身振りを大げさにしながら説明をはじめた。 「あとラストで柏木くん争奪戦に勝った新藤くんが、柏木くんを誘って遊園地デートするってシーンを書くだけなの」 俺争奪戦って何だよ! つか、どんな話なんだよ! ツッコミ所が多すぎてツッコミきれねぇんだけど! でも、これも内川のためか……。 「もう、わかったよ。それするのいつにする?」 「それでね、もう一つお願いが。……言いにくいんだけど」 「もう何でもいいから言えよ。やるから」 「ホント!?」 なんかめんどくさくなって何でもいいなんて言ってしまったけど、軽い返事なんてするもんじゃないとすぐに実感することになる。 塚本は本当に言いにくそうにしてたんだけど、意を決して出た言葉は……。 「柏木くんには……女装してほしいの」 じょそう? 女装だと⁉︎ はぁ──!? 「じょ、女装ってなんだよ! 俺にスカートはけって言うのか!?」 「そうです」 そうです。ってアッサリ言ってんじゃねぇよふざけんな! なんでた。なぜ、女装して遊園地に……。 でも内川をみると承諾しろというオーラが出まくってる。 すると、修平がにっこり笑って言った。 「千秋が女装して僕とデートして、それを塚本さんが観察するんだろ? だったら内川くんも一緒に行ってダブルデートにしたらどうかな?」 修平は何をどさくさに紛れて話をややこしくしてんだよっ! でも、それを聞いた内川と塚本の顔が一気に赤くなった。 その後なんやかんや言い合ったものの、俺たちはダブルデートをする事に決まった。 何度も何度も内川の為と心の中で繰り返しながら承諾するしかなかったわけなんだけど。

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