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17.その目で見つめて 4
──ダブルデート当日。
俺たちは塚本の指示で学校近くのマンション前に集合させられた。
「ここは誰の家なんだよ⁉︎」
「さぁ、誰の家なんだろうね」
特になんの説明もなく集合させられて俺は朝からイライラしてるのに、逆に修平は機嫌良さそうにしている。
「なんでお前はそんなに楽しそうなんだ?」
「千秋とデートだからね」
「デートっても俺、女装だぞ?」
「女装も楽しみだよ。きっと可愛いよ」
俺はめちゃくちゃ気が重いと言うのにいい気なもんだよ。
すると内川もやってきた。
「おはよう。あれ? 塚本さんは?」
「まだ来てねぇよ」
そんな話をしていると後方からガサガサっと音がした。
「塚本いたのかよ! 出てこいっ」
すると見つかったとばかりに物陰から塚本が現れた。
つか、いつから見てたんだろう? 俺はさっきの修平との会話が聞かれていないか気になったけど、それに気付いた修平が大丈夫と言わんばかりに微笑んだ。
そうしているとマンションから1人の女の子が現れる。
「あ、塚本先輩。今日、メイクするのはこの方たちですか?」
軽く頷くと塚本は俺たちにその女子を紹介する。
「この子はメイク担当のあおいちゃんです。うちの学校の1年生」
「おい塚本、まさかこの子も腐……」
と言いかけたところで塚本に遮られる。
「あおいちゃんは腐女子じゃないよ。腐女子の生態は理解しくれてるけど。メイクが得意なんだよ」
「はいっ!」
あおいちゃんという人は塚本が腐女子であることも理解していて、今日もその為に俺が女装するはめになったことも知り協力してくれるという。
そして彼女に連れられて彼女の家らしき部屋にみんなで行った。
彼女の部屋に通されると、そこには大量の服とメイク道具、かつらなどが並べてあって準備は万端の様子。
「どんな感じにしますか?」
あおいちゃんが塚本に聞くと、塚本は修平にどうする? と聞いた。
「うーん、これなんてどう?」
つか、修平‼︎ しれっと会話に参加してんじゃねぇよ!
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