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17.その目で見つめて 6
メイクして着替えるだけでこれだけ疲れてるのだから、これからのことが憂鬱で仕方ない。
脱力しまくってた俺をあおいちゃんが立ち上がらせると部屋の鍵を開けた。
「出来ましたよー」
そう言いながらあおいちゃんがドアを開けるとみんな入ってきて、みんなと一緒に入ってきた修平と目が合った。
めちゃくちゃ笑われるに違いないと身構えていると……。
「…………」
なんだよ! なんか言えよ!
修平は黙り込んでいるかと思うと、持っていた雑誌をボトッと落とした。
何? 放心? 絶句!? そんなに酷いのか⁉︎
そして修平はそのままドアの陰に隠れてしまう。
つか、……他のみんなも絶句してる状況から、まだ鏡見てないけど大概わかってるんだ。
見れたもんじゃねぇんだな……。
そりゃそうだよな。女装だもん。
俺、れっきとした男だし気持ち悪いだけだろ。
軽く落ち込んでいるとあおいちゃんが姿見の鏡を持ってきた。
そこには1人の美少女が映ってて……。
誰だ? この可愛い子。
振り返ってもそこにその子はいない。
ん? んん? ……!?
ま、まさか……。
────お、俺!?
驚いて鏡を掴み顔を左右に動かしたり、手を挙げてみたりしてみる。
するとその鏡の中の女の子も同じように左右に顔を動かしたり手を動かしていて……。
マジか……。これが化粧ってやつの威力なのか!?
すると目を丸くし口をパクパクさせながら内川が言った。
「本当に柏木か?」
いや、俺自身も本当かと思うんだけど。
そうしていると、鼻息を荒げた塚本があおいちゃんとがっしり抱き合ってキャッキャ言ってるではないか。
「やっぱり柏木くん女装似合いすぎ! さすが女顔!」
「塚本先輩! どうしよう! 私、男の娘に目覚めてしまうかも⁉︎」
「女顔って何だよ! 男の娘ってなんだよ!」
俺は否定してるのに、みんな納得してるようでムカついてしょうがないんだけど、今はそれよりも部屋の外に行った修平が気になって仕方ない。
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