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17.その目で見つめて 7

気になって追うように部屋から出ると、修平が壁によりかかりながら立っていた。 「……修平?」 さっきより幾ばくか表情が解れているように感じる。 「千秋、よく似合ってるよ」 「さっきはどうして?」 そう聞くと修平は部屋の中へと意識を集中させて、みんながまだ中で盛り上がっているのを確認すると気付かれないようにゆっくりとドアを閉めた。 そして俺を引き寄せて、物凄く優しい声で囁いたんだ。 「さっきはね、余りに千秋が可愛くて恥ずかしくなっちゃったんだ」 そんなことを言われるとは思ってなかったから、一気に顔が赤くなる。 「僕も今の千秋みたいに顔が熱くなったから」 だから部屋から出たんだよと修平は言う。 修平が一瞬で顔が赤くなるなってことは……。 「そんなに俺、か、可愛いのか?」 「可愛いよ」 「修平の、好みなのか?」 「上目遣いとか……されると僕困るんだけど」 「上目遣い? してねぇーけ…ど…って、俺の身長が低いって言いたいのか!?」 するとクスクスと笑った修平が耳元で囁いた。 「違うよ。可愛い過ぎるから。キスしたくなるくらいにね…───」 修平が耳元で静かに囁いた言葉が脳内に響いてドキドキする。 息が耳にかかるくらい近くて、人の家なのにめちゃくちゃキスしたい衝動にかられてしまう。 いやいや人の家だから! って理性が働きつつも、修平もその気なんじゃないかな? とか。 もしかしてキスされるのかな? なんてちょっと期待しちまったのに。 「でもグロス取れるから出来ないね」 って……。 アッサリ言われてガッカリした。 そりゃ、人の家でキスとか無理に決まってる。 わかってるけどドキドキして少し期待してしまった分、ちょっと残念……。 なんか俺だけがキスしたかったみたいで恥ずかしいし、頭を切り換えて部屋に戻ろうとドアに手をかけたら何故か修平がその手を制止させた。 俺が振り向くと。 「千秋、ちょっと舌出して」 舌? 意味が分からなかったけど、言われた通りに舌を出すと……。 修平が、俺の舌先を舐めた……。

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