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17.その目で見つめて 12
「どこ行くんだ?」
「僕たちの役目は終わったから、観覧車に乗ろう」
「うん。乗りたい!」
観覧車と聞いて一気にテンションがあがる。
そして、前は結構並んでいたのに今回はそこまで待たずに乗ることができた。
俺たちにとって思い出の観覧車だし、前はもう暗くなっていたけど、今日はまだ明るいからまた新鮮に思えてすげー楽しい。
修平と並んで座りワクワクしながら窓の外を眺め、修平も楽しんでるかな? と見てみると……。
……あれ?
──笑ってない?
さっきまで普通だったのに、急に表情が暗くなったから心配になった。
「どうしたんだ? 具合でも悪いか?」
「…………」
「どうしたんだよ。乗り物酔いか?」
すると修平は軽くため息をついて俺を見ると、静かに口を開けた。
「……千秋は隙がありすぎる」
「はぁ? 何の話だよ」
「さっきだって言い寄られて」
さっき? さっきってあのナンパ騒ぎか?
「あれは向こうが悪いんだろ?」
「僕がだめだって言ったらだめなんだ」
そう言うと修平は俺の首筋に顔を埋めた。
ゴロゴロとすり寄ってくる修平がなんだか可愛くて頭を撫でる。
なんだよ、拗ねてんのか?
拗ねながら甘えモードとか……ちょっと可愛い。
たまにこうなる修平は俺しか知らない修平だから気分が良くなる。
そのまま観覧車がてっぺんに行くまで俺が修平を抱きしめていた。
すると、てっぺんになったころで、ムクムクっと修平が体を起こす。
「千秋とキスがしたい」
真面目な顔で言うもんだからきょとんとしてしまったけど、理解して顔が赤くなる。
「お、お前なーいつもは予告なしにしてくるくせになんだよっ!」
「千秋が可愛すぎるから」
なんだよ、今日はいつも以上に褒めやがって!(いつも可愛いとは言われているが)
修平に褒められるのは正直悪くないけど、今日は女装してるからだろうか? ウジウジした俺はまた女々しいことも考えてしまって目を伏せた。
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