311 / 622

17.その目で見つめて 19

そんな様子を見ていた修平はクスクス笑いながら、俺を椅子に座らせた。 「目瞑って。化粧落とすから」 「自分でやるよ」 「いいから。目瞑って」 修平は俺の顔に何やらヌルッとした感じのものを乗せてクルクルと肌の上を滑らせる。 あおいちゃんがいろいろ塗ったり書いたりしていた目元は特に念入りにクルクルしていた。 「なぁ、今塗ってるの何?」 「化粧落とし。姉貴の使ってる高いやつだからバレたら殺されるよ」 「ば、ばかか! そんなん使うなよ!」 すると修平はクスクス笑いながら、冗談だよって笑った。 そしてお湯をかけると言うので頷いて息を止めると、シャワーのお湯が顔にかかる。そして修平が優しい手つきで俺の顔を洗ってくれる。 勢いのいいシャワーが化粧を流していき、修平がシャワーを止めると幾ばくかスッキリした気分になった。 「ぷはっ! スッキリした」 目を開けた瞬間、修平の手が俺の頬に触れた。 そして修平は目を細める。 「やっぱり千秋は素顔の方がいいな」 「えっ?」 「化粧映えするから凄く可愛かったけど、やっぱり僕はそのまんまの千秋のが好きだよ」 「なっ……」 カァーっと顔が熱くなっていくのを感じた。 なんなんだよ! サラッと恥ずかしいこと言いやがって。 思わず俯いてしまうと今度は修平が俺の後ろに回ってシャンプーに手を伸ばす。 「今日は洗ってあげる」 「なんだよ。今日は何か特別な日なのか?」 「特別だよ。千秋と初めて一緒に風呂に入った記念。だからうんと甘やかせたいんだ」 こいつは絶対にバカだ。 頭いいくせにバカだ。 これ以上俺を甘やかせたてどうするつもりなんだよ。 でも修平は機嫌良さそうに俺の髪を洗っている。そんなに俺の髪を洗うことが楽しいことなのか? …………それなら、俺だって。 「俺もお前の洗う」 「千秋、急に動くなよ。目にはいるだろ?」 「お前も座れよ。今度は俺の番だ」 修平は自分はいいって言ったけど、俺だってお前を甘やかせたいって言ったら少し嬉しそうな顔をして髪を洗わせてくれた。二人で頭を洗いあって、お湯掛け合ったりするのは修学旅行の延長みたいでちょっと楽しいかも。

ともだちにシェアしよう!