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17.その目で見つめて 29

「なぁ、修平……?」 「何?」 修平の背中を軽く撫でながら言うと、修平が顔を上げる。 「修平って美人が好みなのか?」 俺の質問にきょとんとした様子の修平は、あぁあれかと呟いて少しだけ目を逸らした。 「さっきの気にしてるの?」 「いや、お前の好みとか聞いたことなかったし……今までどんなタイプと付き合ったのか、とか……気になって」 「千秋は、さっき僕が自己嫌悪に陥っていたの忘れた?」 そして修平は体を起こすと、またばつが悪そうに頭を掻く。 『……自分が情けない』 『千秋の信用を失わないか怖いんだ』 忘れてないし、信じてるのは嘘じゃないけど。 やっば気になるじゃん。カナって人、すげー美人だったし。 俺が俯きながら考えていると、少し困った顔をした修平が俺の髪をなでた。 「千秋にはマイナスな印象を植え付けたくないんだけどなぁ」 そう言いながらフーッと息を吐き、一回深呼吸をすると修平が俺の目を真っ直ぐに見た。 「先に言っとくけど、僕は別に綺麗系が好きじゃないよ」 「でもカナって人が」 「確かに今まで付き合ってきたのは綺麗系だったからそんな噂がたってたようだけど、あの人に限っては自分が綺麗だって言いたいだけだと思う。そういうタイプだから。本当は可愛い系が好みだし」 「好みは可愛い系なのか? ……でも、付き合ってきたのは綺麗系なんだ」 あ、すげー今、俺ってウザウザ発言しちまったかも……。 そーっと修平を見るとまた困ったように笑っていた。 「それは……言い寄ってきたのがたまたま……そうだっただけ」 修平は端麗な容姿からシャープでクールな印象を持たれがちだ。 だからこそ付き合いたいと言い寄ってくるのは、自分が綺麗だと自信のある人ばかり。 年頃の男だし、興味本位で何人かと特に何も考えずに付き合ったり、別れたりしていたんだと修平は物凄ーく言いにくそうに話してくれた。 修平は人数とかが俺にわからないように気を遣ってたみたいだけど、多分たくさんだよな。 「でも、それは千秋を好きになる前の話だからね」 修平は最後に念を押すように言った。

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