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17.その目で見つめて 30

そして俺を強く抱きしめながら続ける。 その腕は必死に何かを訴えようとしているようで、それが感じられるとホッとしている自分がいる。 「初めて自分から好きだって言ったのも、好きになってもらいたくて追いかけたのも、付き合って心が満たされたのも……千秋だけだから」 むず痒くなるくらい甘い言葉を平気で言う奴だと呆れる反面、こんな告白を今までの人は聞いたことないんだっていう優越感で俺の胸は満たされていく。俺の表情が落ち着くと、修平も胸をなでおろしたように見えた。けど、ついでだからもう一つ聞いてみることにした。 「修平の童貞卒業はいつなんだ?」 「え? それも言うの?」 「いいから答えろよ! 嘘付くんじゃねぇぞ」 するとまた修平は大きなため息をついた。そして、本当に言いたくなさそうにばつが悪い表情で呟くように小さな声で答えた。 「……中3だよ」 「ち、ち、ちゅうさん!?」 予想では高校入学後だと勝手に思っていたのに、義務教育中に済ませていたとは……。 恐るべし、新藤修平。 「もういいだろ?」 「脱童貞のときって気持ちよかった?」 「はぁ?」 「よく言うだろ? この世のものとは思えない快感って」 「千秋、情報に踊らされすぎ。僕は千秋と初めてヤッた時のが何倍も気持ちよかったけど」 ま、ま、またコイツはそんなことを言いやがって! 不意に真っ赤になった顔を隠すためにベッドに潜り込んで修平に背を向ける。 すると後ろから修平が抱きしめてきて耳元で言ったんだ。 「千秋も脱童貞させてあげようか?」 「えっ?」 驚いて振り向くと、修平は目を細めながらキスを落とした。 「千秋がしたいならさ、いいよ。女の子じゃないけど」 なんかやけにしおらしい修平を見てて不思議に思う。 今までに何度も修平を襲う計画を立てていたけど、いつも寸前のとこで失敗していた。 最近は襲ったりもしてなかったけど、修平が良いというなら……。 そう思ったけど、俺はかぶりを振って修平の胸の中に潜り込んだ。 「別にいいや。仕方ないから修平だけの千秋でいてやるよ」 なんて恩着せがましく言ってはみたけど。 俺は修平が好きだから、修平からだけ教えてもらいたいんだ。 その日の夜は修平の家族がいるからイチャイチャは控えめだったけど、俺たちは抱き合って眠った。 修平の寝顔が幸せそうだったから、俺の心も温かくなったんだ。

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