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第18章 背中合わせ 1

── それから、2週間ほど経った。 修平の過去的な話を聞いてから、前ほどの不安感にさらされることもなくなり自信を持って毎日過ごしている。俺も大人になったという事だ。フフン。 「柏木おはよう!」 ひとりほくそ笑んでいると後ろから内川の声がした。振り向くと内川と塚本がいた。 「おう。内川に塚本おはよう」 「おはよう」 実は1週間ほど前からこいつらも正式に付き合うことになったみたいだ。 遊園地に行った日、俺たちが帰ったあと塚本は猛烈なスピードで話を書きあげたらしい。 そして数日後、その話が載っているBLサークルの冊子を献上しながら内川に告白し直したらしいのだ! 内川はとまどいながらも献上された冊子を受け取って宜しくお願いしますと頭を下げたとか。 なんやかんやうまく言ってよかった。 ただ塚本は内川の手がぶつかるだけで鼻血を吹き出すらしいから、進展は遅そうだけど。 2人も楽しそうだしよかったと思う。 それに俺も観察されなくなったわけだし、これからは内川で大いに妄想するがいい。 ✳︎✳︎✳︎ そんな感じで落ち着いた日々を過ごしていたある日の放課後。 俺と修平が帰ろうとしていると門の前に、この間のカナが立っていた。 修平が担任に呼ばれて用事を済ませてから出てきたので門の周辺に他の生徒の姿は見えないが、カナの露出多めなその格好は目立ちすぎる。 しかし、どぎまぎしている俺と違い、視線すら合わせずに歩いて行く修平。 修平が通り過ぎた瞬間、ムッとした表情のカナが振り向いた。 「修平。無視してんじゃないわよ。こないだの子とはまだ付き合ってんの?」 修平は何も言わずにスタスタと歩いていく。 その態度が気にくわなかったのだろう、カナは修平の腕を掴んでもう一度言った。 「無視すんなってんでしょ!?」 「……なに? 五月蝿いんだけど」 「こないだの子、千秋ちゃんだっけ? まだ付き合ってるの?」 「付き合ってるよ」 「へぇ、修平が2週間以上も付き合ってるなんて珍しい。あれから2週間くらい経ったし別れたかと思ったのに」 クスクス笑いながらカナは修平の腕を指でスーッと撫でた。

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