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18.背中合わせ 7

すると目の前を同じ学校の生徒が通りかかった。 あの眼鏡の女……。 あの眼鏡の女は、女子の間で修平の情報通と言われていて、いつも修平の話をしてるってやつだ。 前に女装した俺を見て、修平の彼女を見たと情報を広めたのも、塚本曰わくこいつらしい。 名前……何だったかな。 それなりに目立つ存在ではあるが、クラスが違うため名前までは知らない。 けど藁にもすがる思いの俺は、修平のどんな情報でも欲しくてそいつに声をかけた。 「あ……あのさ!」 「あれ? 柏木……くん?」 普段、喋ることのない相手から突然話しかけられて相手も少し戸惑っているように思えたけど、そんなことを今は気にしていられない。 「なぁ、昨日どこかで新藤のこと見かけなかった?」 「え? 昨日? どうして?」 でもあまりにも唐突な質問は相手を余計に戸惑わせるだけだと、言ってから気が付いた。 急に昨日の話なんてしたら不自然だよな。 どうしてと聞かれることは予想してなくて理由なんて考えてなかっし、ただどこかで見かけたとか小さくてもいいから手掛かりが欲しいとか……って、どう説明したらいいかわからない。 そうしているとその子は思い出したかのように手を叩いた。 「そういえば……。昨日、新藤くんが女の人といたのを見た」 女の人? 女の人で思い当たるのは、アイツだけなんだけど……。 「もしかして髪の長い性格キツそうな女か!?」 すると、その子は頷いたので、きっとカナだと思った。 「他にも男の人が2~3人いたよ」 男が2~3人? 「で、何してた?」 「そこまでは……。塾行く途中だったし、新藤くんはすぐに車に乗せられて行ったから……」 「車? 乗せられて?」 「うん。そう見えたけど……。えっ……なにかあったの? ……もしかして新藤くんが休んでるのって」 少しずつその子の顔が青ざめて行ってるような気がした。 でも、この勘違いは非常にやばい。

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