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19.俺の声を聞け 3

そんなある日……。 担任に用事を頼まれて帰るのが下校時間ギリギリになってしまった。 「ただいまー」 家に帰ると2階から音をさせながら樹が下りてくる。 「兄ちゃん、咲良と会わなかった?」 「咲良? 会わなかったけど、どうして?」 「部活終わりに何か買い物するとか言って兄ちゃんの高校の方に行ったから、もしかしたら会ったかもって思っただけ」 なんだ、咲良が俺に会いに来たわけじゃないのか。 と、少ししょんぼりしていると母さんがリビングから顔を出してご飯にするから着替えてきなさいと言った。 着替えるために部屋に行こうとしたところで、ポケットに入れていたスマホが震える。 画面を確認すると、咲良からの電話だった。 なんだ? なんだ? と久しぶりの咲良からの電話にウキウキしながら通話ボタンを押した。 「咲良ー。どうした?」 しかし電話の向こうから聞こえてきたのは、ハァハァと男の荒い息遣いだけ。 一向に息遣いだけ聞こえて何も喋らないからいたずらか電話か? と耳から離して画面を確認するがやっぱり咲良からの着信だ。 「誰だよ。うちの咲良に何した!?」 妹が変な変態野郎に捕まったんじゃないかと頭に血が上っていく。 「なんとか言いやがれ!」 そう言ったとき……電話の向こう側から、聞き覚えのある声が聞こえてきた。 『千秋の家の近くの公園。すぐに来て』 それだけ言うと電話は切れたけど、あの声は間違いない。 ───…修平の声だった。 なんで咲良の携帯から? 咲良の声は聞こえなかったけど、咲良と一緒にいるのか? 咲良にいったい何の用があるって言うんだ。 咲良に何かあったのか!? 俺はカバンをそこに置いて飯は後で食うと言い、家を飛び出した。

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