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19.俺の声を聞け 6
俺はその時、前に修平が言っていた言葉を思い出した。
『咲良ちゃんって女装した千秋に似てる』
あ……。狙われてたのは咲良じゃない。
…───俺の方だ。
カナの行動からして考えられるのはそれしかない。
修平は咲良が巻き込まれるのを知って、俺に別れようと言ったのか!?
じゃなかったら、咲良に手を出さない約束とかするわけがない。
頭の中でいろんな考えが回る。
そうしているうちに家の前に着き、咲良が門を開けた。
「咲良、母さんに今日は遅くなるか帰れないかもしれないと伝えておけ」
「修平さんに謝りに行くの?」
「あぁ、咲良を救ってくれたからな……」
「わかった。お母さんにはうまく言っておく」
あまりにも素直ににっこりと笑って返事をした咲良が可愛くて、わしゃわしゃと頭を撫でてから走ってさっきの公園へと向かった。
───…
──────
しかしさっきの公園にも、咲良が絡まれたという場所にも修平の姿はない。
修平の家にも行ってみたが部屋の電気は消えていて、姉ちゃんに聞いてもやっぱりいないということだった。
さっき電話が掛かってきたとき、修平の息遣いから走っていたことが伺えた。
そんなに走って逃げなきゃいけないようなヤバい相手なんだろうか。
もしかしたら、咲良を逃がしたことでまたどこかに連れて行かれたのかも!?
なんか胸騒ぎがする。
メールを打とうかと思ったが、文字を打つこと自体もどかしくて電話を掛けた。
お願いだ。電話に出てくれ……。
なぜこんなに胸騒ぎがするのかわからない。
コール音が永遠に感じるくらい長いように思う。
そして、長いコール音の後に、電話が繋がった──。
「修平っ!」
焦って思わず放った俺の声に、一呼吸置いて電話の向こうで声がした。
『───…もしかして千秋ちゃんかしら?』
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