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19.俺の声を聞け 14

そして最近の出来事が頭の中を駆け巡り、それらがまるでパズルのピースを合わせるかのように繋がっていった。 修平は、やっぱり俺のために……。 するとさっきまで座り込んで泣いていたカナが立ち上がって、俺を突き飛ばし修平に平手打ちをくらわせた。 バシーンと乾いた音が響くと、また座り込んで大声で泣いている。 「……修平はヒドいわよ。勝手すぎる。私、あなたの望むことは全部してきたじゃない! どうして私が男に負けなきゃいけないの? 彼は私以上に言うこと聞くわけ? だから手放さないの?」 泣きながらカナは修平の胸をポカポカと殴りつけた。 すると、修平はカナの体をやんわり押し返すようにして静かに言った。 「……それは違うよ」 修平は切れた口の端を手の甲で拭うと続けて話し始める。 「千秋は言うことなんて聞かなかったさ。反抗ばかりしてね。でも次第に僕の方が千秋に何でも望むことをしてあげたいと思うようになった。千秋が大切で、大切で……好きなんだ。きっとそれはこれからも変わらない」 「……どうして男なのよ」 「簡単だよ。好きになった相手が千秋だっただけだ。それが、たまたま男だっただけ」 修平があっさり言った言葉で俺の胸は射抜かれたみたいに痛くなって、心の真ん中にすごく響いた。 するとカナは泣き腫らした目で、それでも虚勢を張るように睨みつけながら修平に言う。 「あなた私にそんな態度を取ってもいいと思ってるの?」 「好きにすればいい。もう僕はお前の言うとおりにはしないし、千秋にも何もさせない」 「あんたが男と付き合ってるってみんなにバラすわよ?」 すると修平は俺の方をみると柔らかく微笑みながら頷いて、またカナの方を見た。 「千秋には申し訳ないけど、僕はバラされたって構わない。僕らは何も悪いことはしてないんだから。ただ、愛し合ってるだけ…───」 カナは何も言わず、俯いてただ震えていた。 カナは本当に修平が好きだったに違いない。 やり方は汚いけど何とかして修平を手に入れようと必死で。 高飛車な鎧が彼女をそうさせたのか、表現の仕方は強引で突拍子なかったけど、根底には修平への思いがあったんだろうって、何となく直感的に感じた。

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