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19.俺の声を聞け 17

ドライヤーを取って部屋に戻ると修平はベッドに横になっていた。 「髪乾かさないと風邪ひくぞ」 俺は修平を起こして髪を乾かし始めると、力なく修平が言ったんだ。 「……巻き込んでごめん」 「あー本当だよ」 「怒ってる……よな?」 「怒ってる。お前な……なんで、俺に言ってくれなかったんだよ。俺が信じられなかったのかよ」 さっき天邪鬼な自分に呆れたばかりなのにやっぱり俺はこんな言い方しか出来なくて、修平は何も言わず黙ったまま俯いていた。 怒ってるとは言ったけど、本当はそんなことじゃなくて。 ただ、言ってほしかった。 修平が俺の為にしたことだとしても、一人で悩むのではなく信頼してほしかったのかもしれない。 2人のことだから、2人で解決する道だってあったはずだ。 あの時、……俺は世界が終わったと思ったんだから。 すると修平がポツリと呟いた。 「……ごめん」 乾いていく髪がドライヤーの風になびいている。 艶々した黒髪はサラサラしてさわり心地が良い。俺がとても好きな感触だ。 そんな小さなことでも、修平がここにいるって実感して凄く嬉しいのに。 今日までのことを思い出すとまた暗くなって……このぐるぐるした気持ちをどう伝えたら上手く言えるのだろうか。 すると修平はまた力なく呟くように言う。 「僕は千秋に許されないことをした」 「許すとか許さねーとかじゃなくて……」 ここでズバッと言えたら格好良かったんだけど、言葉が全然纏まらない。 良い言葉が浮かばなくてあれこれ考えていると、修平は力なく微笑んだ。けど、その微笑みは無理に作ったみたいに震えていて、すぐに眉尻が情けなく下がっていく。 「ごめん。本当にごめん。謝っても謝っても償える気がしない」 「いや、あの……」 なんか、俺が超怒ってるみたいに勘違いされなかっただろうか? ただどう言って良いかわからなかっただけだけど、この流れだったら確実に怒ってるって修平は思うわけで……。 どうしようって思っていたら修平が少し休みたいと言って、俺に背を向けて静かにベッドに横になった。

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