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19.俺の声を聞け 18

そんな修平の後ろ姿をみていると切なくなったというか、近くにいるのに距離を感じる。 さっき上手く言えなかったことが急に不安になった俺は、思い切って修平のベッドに潜り込んだ。 いつもなら修平は潜り込んだ俺の方を向いて抱きしめてくれるはずなのに、今日は壁の方を向いたままで、そっとその背中に触れてみても修平は黙ったままだった。 さっきの言葉はさすがに言い過ぎたかも……。 許すって言えば良かった。 修平にも事情があってそうしてたんだから、水に流すくらい寛大に“許す”って言えば良かった。 こんな時、天の邪鬼な自分の性格が本当に嫌になる。 いつも肝心なところで思ってることと逆のことを言ってしまったり、素直になれないなんて……最悪だ。 俺だって色々考えたし辛かったけど、修平だって辛かっただろうし、たくさん殴られて、身も心も傷ついたってのに……。 修平をまた傷付けたら意味ないじゃないか。 ……だから、素直にならなくちゃ。 そう、わかってはいるのに何から言ったらいいのか、どう伝えたらいいのかわからなくて、おずおずと修平に声をかける。 「修平、偉そうなこと言って……ごめん」 俺は修平の背中にくっつきながらそう言った。 でも修平は壁の方を向いたまま動かない。 俺に呆れてしまったんだろうか? 凄く不安で胸が痛い……。 本気で嫌われてしまったらどうしよう───…。 なんて、思考はどんどん悪い方へと広がって行くばかりだ。 嫌だ。嫌だ。嫌だ。修平に嫌われるのだけは嫌だ。 感情が高ぶってしまった俺は修平の服をぎゅっと掴みながら口を開く。 「俺のこと嫌いにならないで……」 声なんて少し震えてカッコわりー……。

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