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19.俺の声を聞け 19
しばらく沈黙が続いた。
その沈黙がとても不安を煽り、心臓がバクバクと音を立てて頭に響く。
すると修平が静かに言ったんだ。
「千秋のことを嫌いになったりなんかしないよ。嫌われるなら僕の方だ……」
「んなわけねぇ……」
しかし修平は俺に背を向けたまま、かぶりを振り静かに話し続ける。
「自分が情けないよ……僕はどうしようもない奴だ。千秋に何も告げずに別れようって言ってしまったし、それはさっき千秋が言ったように僕が千秋を信じれなかった証拠なんだよ。愛想を尽かされてもしょうがない」
「しょうがなくねぇよ!!」
俺は飛び起きると修平の肩を掴んでこちらを向かせる。
「お前がどうしようもない奴なら、俺だってそうだ!」
修平は驚いた顔で俺を見つめていた。
俺は少し震えながら、修平を見下ろす。そして、大きく息を吸い込むと、ゆっくり吐き出して、もう一度修平と視線を合わせた。
「いつか修平が俺のこと好きじゃなくなったらどうしようっていつも考えてた。修平を信じてねぇわけじゃねぇよ。ただ、やっぱり女のがいいのかな……。とか、ウジウジ考えちまって……でも、今思えばそれは俺も修平を信じれてなかったからかも」
修平はじっと俺をみて、黙ったまま話を聞いてくれていた。
緊張しながら、俺はさらに続ける。
「自信もなくて、いつか俺だけ取り残されたらどうしようって、何回も思ったことがある……。あの時カナに俺が好きだってはっきり言ってただろう? 素直に嬉くて、それと同時に男だ女だってこだわってた自分が恥ずかしくなった。……だから、お前がどうしようもない奴なら俺だってそうだ!」
そして俺は最後に言ったんだ。ずっと心の中にあったけど、今まで言葉に出して言わなかったことを。
本当は一生、修平には言わないつもりだった。だって、こんな風に思ってるなんて知られたら恥ずかしいから。でも、これは俺の素直な気持ち。
「お前が好きだから、俺は嫌われたくない。……いつかお前が俺を好きじゃなくなったら、……俺は生きていけない」
すると途端に修平の表情がほぐれていくのがわかった。
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