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19.俺の声を聞け 20

愛おしそうに目を細めると、上半身を起こして俺にそっとキスをした。 それは温かいキスで、たぶん数秒なんだけど時間が止まったみたいにゆっくり染み渡る。 そして唇が離れると修平はまた頭を枕に落として、俺のことを引き寄せた。 「千秋を嫌いになるなんてありえないよ。別れようとか、酷いことばっかり言ってごめん」 「……それはずっと先まで俺を好きでいてくれるってこと?」 俺がそんなことを言うと修平は抱きしめる力を強めた。 「“未来”は“今”の積み重ねなんだよ。“今”好きな気持ちを重ねていけば“未来”までずっと好きだろ? 僕はいつまでも千秋が好きだよ」 修平の体温や匂いを感じながら聞いた言葉は一気に心を芯から温かくさせた。 そして修平は、胸の中に顔を埋める俺の髪を撫でながら、「それから……」と続けた。 「僕だって同じ。千秋に嫌われたら、僕だって生きていけないんだよ」 そんなことを言うものだから咄嗟に。 「俺が修平を嫌いになるわけない!」 って否定すると修平はやっぱり同じだろ? って笑ったんだ。 「もう、一生この手で千秋を抱きしめられないと思ってた……もう、ずっと陰からしか思えないんだと覚悟してた」 痛いくらいに強く抱きしめる腕は少し震えているようで、聞こえてくる修平の鼓動は速くなっている。 「だから……よかったら……もう一度、やり直したい。いい……かな?」 なんかそうやって改めて言われると胸がいっぱいになって、頭の中も修平で一杯で。 「…………うん」 修平にしがみつきながら頷くと、修平はホッとしたように笑った。 でも、そのために俺はちゃんと聞いておきたいことがあった。 「俺、ちゃんと聞きたい。修平が別れるって言った背景にカナたちがいたことはわかってる。それに咲良が絡まれたのも関係あるんだよな? 俺は全てを知りたいんだ」 そう言うと修平は少し俯きながら、ゆっくりと話し始めた。 「カナが学校に訪ねてきた日があっただろ? ───…」

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