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19.俺の声を聞け 23
─────…
「だから別れるって言ったのか? 咲良を守るために……」
すると修平は少し困ったように微笑むと、俺の頬を撫でた。
「咲良ちゃんだからってわけじゃない。咲良ちゃんは千秋の大切な妹だから」
「俺の……」
「カナが千秋のことを勘違いせず千秋だと認識していれば、四六時中千秋の近くにいて誰も寄せ付けないようにしただろうね」
すると修平は少しだけ視線を外すと、ゆっくり続けた。
「けど、咲良ちゃんまでも巻き込んでしまったら、情けないけど守りきる自信がなかったんだ……。怖い思いはもちろんさせたくないし、四六時中見張るわけにもいかないしね。それに、もしものことがあったら……」
そこまで言うと修平は視線をあげて、俺の顔を真っ直ぐに見つめた。
その目は悲しげだったけど優しく暖かさのある眼差しで、思わず見入ってしまうと、修平はまた俺の頬に触れながら続けた。
「もしも千秋が一番大事に思ってる咲良ちゃんに何かあったら、僕は顔向けできない。………………だから、……離れるのが懸命だと思ったんだ」
修平の言うとおり、俺は咲良が凄く大切で、凄く大事で……。
でも周りからはただのシスコンとしか思われてなかったのに。
それに、修平にだって今まで直接そんな話をしたことだってなかったはずだ。……でも、そっか。そうか。
俺と咲良のために……。
なんて思って、胸の真ん中がジーンと熱くなっていると修平に引き寄せられて抱き締められた。
そして切なそうな修平の声が響く。
「こんな風になるのなら、最初から千秋と立ち向かっていれば良かった。そうすれば、千秋を泣かせることもなかったのに……本当にごめん」
「あの時言ったことって……嘘なんだよな? お、俺に……あ、飽きたとか……」
すると、修平は俺を抱きしめたまま耳元で囁いた。
「飽きようと思っても、無理だよ」
その声が妙に色っぽくてドキドキする。
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