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20.ねがいごとひとつ 3
それから何日かして、俺は修平の家に遊びに行った。
そして修平の部屋でゲームをしていると、パタパタと軽快な足音が聞こえて来て、ドアがノックされたと同時に修平の姉ちゃんが入ってきた。
「千秋くん、いらっしゃーい」
「勝手に部屋入ってくるなよ」
相変わらず修平は姉ちゃんに対してガードがきつい。
「いいじゃん。千秋くん、前に言ってたゲームしない?」
「今、千秋はこっちのしてるの!」
「修平には言ってないでしょ?」
そんな姉弟の口喧嘩が少し止んだ瞬間、俺は姉ちゃんに話しかけた。
「そういや、修平の姉ちゃんに相談したいことがあったんだけど……」
すると次の瞬間、この似たもの姉弟は同時に反応した。
「えっ!!」
「え……!?」
こういう瞬間はうちの双子みたいだけど、2人のテンションはまるで違う。
「私に相談!? いいよ! いいよ! 何でも言って」
「姉貴に相談って何!? そういうことは僕に……」
しかし俺は修平の話を途中で遮るように目を向けた。そしてそのまま目で合図を送る。
“言ったよね? 俺がどこで誰といても、嫉妬するなって”
それは言葉にせずとも修平に伝わったようで、修平は大人しくなると、俯きながら寂しげにこっちをみている。それは、まるで捨てられた仔犬みたいな。
なんかその様子に罪悪感的なものを感じてしまったが、ぐっとこらえる。
その仔犬ちゃんに、待て! を教えてやるんだから。
そして、俺は姉ちゃんと一緒に部屋を出て、姉ちゃんの部屋に入ったのだった。
──約20分後。俺は修平の部屋に戻った。
「ゲームの続きしよーぜー」
「…………」
「なぁ! ゲーム」
「……姉貴と何してたの?」
「あぁ、秘密。それよりゲーム」
「……そうだね。僕に聞く資格なんて無いよね」
うわ、修平が暗い。
めちゃめちゃ暗い。
修平に嫉妬させることには成功したわけだけど、故意にやるのってやっぱり罪悪感が残る。
でも、これも計画のうちなので怪我が治って3つ目のお願いを実行するまでの間、俺は何度か修平の姉ちゃんと部屋で話をしたんだ。
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