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20.ねがいごとひとつ 4
──そして、怪我がほとんど治った、ある土曜日。
俺は3つ目のお願いを実行することにした。
修平は相変わらず嫉妬心と戦っている。
クラスの女子や美人の先生では全く動じなかったものの、やはり姉の脅威は絶大らしい。
今日も修平は、俺が姉ちゃんの部屋へと入っていくのを複雑な顔をしながら見送っていた。
そして、姉ちゃんの部屋に入ると今日は部屋の内鍵を閉める。
準備が整うと、振り返った姉ちゃんがにっこりと笑った。
「千秋くん! 今日はいよいよねっ」
そして、少し興奮気味に鼻息を荒げた修平の姉ちゃんが俺の手を引いて部屋の真ん中へと連れて行く。
「さぁ、座って!」
「あ、なんか面倒なことに巻き込んでしまってすいません」
「いいのよ! いいのよ! 私も興味あるから」
そう言って隣に座り、にっこり微笑んだ姉ちゃんが俺の顔を覗き込んだ。
こういう表情とか、やっぱり修平の姉だけあってよく似ている。
思わず目をそらしてしまうと、姉ちゃんはクスクスと笑った。
その笑い方もやっぱり姉弟だ。よく似てる。
「緊張してるの?」
「まぁ、ちょっと……」
「大丈夫よ。お姉さんに任せなさい」
「よ、よろしく……です」
するとさっきまで隣に座っていた姉ちゃんが俺の目の前に座った。
緊張からか少しだけ鼓動が速くなる。堪らず大きく息をすると、また姉ちゃんはクスッと笑った。
そして、そんな俺をなだめるように姉ちゃんが、俺の頬にそっと手を添える。
「じゃあ、千秋くん……始めるから、目瞑って」
そして俺は、こーいうこと初めてではないくせに、やっぱり相手が違うから緊張しながら目を閉じたんだ……。
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─────…
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