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20.ねがいごとひとつ 5

────── ───… 「ね、姉ちゃん……ちょっと待って」 「くすぐったい?」 「う、うん……」 俺の頬に触れる姉ちゃんの手がくすぐったくて思わず身動いでしまう。 それを誤魔化すためにぎゅーっと目を瞑ると今度は優しく肩を叩かれて、そっと目を開ければニッコリ微笑んだ姉ちゃんが俺の顔に手を伸ばした。 「千秋くん、目は軽く閉じてね」 言われたとおりに目を閉じると瞼の上を指がなぞる。 そっと触れられる感覚にビクッとしてしまうと、姉ちゃんはまたクスクスっと笑った。 ───…暫くそんな少し緊張した感じが続いたところで、唇にぬとっとした感触が触れる……。 そして、唇からその感触が離れると目を開けてもいいと言われてゆっくりと目を開けた。 「……さ、これでおしまい。やぁーん、千秋くん可愛すぎ!」 「や、可愛いと言われても」 「あとはこれに着替えてね」 そう言って姉ちゃんは軽くウインクすると部屋から出て行ってしまった。 姉ちゃんに渡された服を見つめながら、着替えなければならないのか……と若干億劫になる。 着替え終わった頃、なぜか廊下が騒がしい。 そっと覗いてみると……。 「なんだよ、姉貴!」 「そんなとこで突っ立ってないで入れば? って言っただけでしょ」 「突っ立ってたわけじゃない!」 「もう。何怒ってるのよ」 うーわ、修平が荒れている。ま、それも仕方ないか。 今日までよく我慢したと思うし、良しとしよう。 俺は立ち上がると勢いよく部屋を出た! 「おい、修平。ちょっと来やがれ」 「……えっ? 千秋?」 戸惑った表情を見せる修平を引っ張って修平の部屋に入る。 修平が戸惑うのも無理ないか。 「ち、千秋? どうしたの、その格好……」 「変か?」 「そんなことないよ……凄く可愛い」 「じゃあ、今から3つ目のお願いを言うな」 修平はまだ状況が理解しきれていないようだけど頷いたので、俺は大きく息を吸い込むと修平の目をまっすぐに見つめた。 「今日1日、女装した俺とデートしろ!」

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