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20.ねがいごとひとつ 7

こんな俺の嘘の罰ゲームに乗っかってくれて化粧してくれた修平の姉ちゃんには感謝している。 「行くのか? 行かないのか?」 「行くよ! 行く!」 そして子供のように笑う修平を見ると、ちょっとは女装したかいがあったかな? って思った。 スカートはスースーするし、ロングのカツラは蒸れるし、化粧はなんか肌が重たいけど、やっぱりもう一度修平と堂々と手をつないでみたかったんだ。 すっかりご機嫌の修平が部屋を出ようとしたので、引き留めるように腕をつかむ。 「ん? 千秋、どうしたの?」 修平が振り向き首を傾げたので、掴んだ腕を軽く引っ張った。 「修平、アレやって」 「アレって?」 「……前みたいに、舌のキス……したい」 一瞬驚いた顔をした修平だったが、すぐに目を細めて微笑んだ。 「そうだったね。忘れてた」 修平はグロスが取れないように俺の出した舌を舐めたり絡めたりして前みたいな舌のキスをした。 そしてそれが終わるとそっと抱きしめられる。体が離れる直前に俺の耳に軽くキスをするとまた修平は微笑んだ。 「さぁ、行こうか」 出掛けようと思って玄関へと向かうと姉ちゃんが俺用にヒールのない歩きやすそうな靴を用意してくれていた。 この服も、かつらも姉ちゃんが用意したもの。ただの罰ゲームだと言ったのに、やりだしたら徹底的にやり抜くのがモットーらしく、お陰で俺は見た目完璧な女の子だ。 「最近の罰ゲームは多様化してるのね~! 私の時代とはスケールが違うわよ」 「いや。姉ちゃんそんなに年、変わらなくね?」 俺の仕上がりに満足げな修平姉に見送られながら街へと向かう。 「なぁ、姉ちゃん罰ゲームって信じてるよな? 俺、女装趣味がある変な子になってねぇよな?」 「あれは完璧信じてるから大丈夫。あーいうの好きな人だし。昔から仮装大会とか学芸会とか命かけるタイプだったから」 「そっか……。あのさ……俺の姿、前の時とどう?」 「そこはさすが姉貴だよね。前の時より僕の好みになった。今すぐ食べたいくらい可愛いよ」 なっ……!? まーた、こいつは恥ずかしいことをサラリと言いやがって。 言い返す言葉に困って俯いていたら、修平はクスクスと笑いながら俺の手を取りまた歩きだした。

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