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20.ねがいごとひとつ 8
繋いだ手を引きながら、修平が振り返る。
「どこ行こうか?」
「……どこでもいい」
なんかこの会話が普通のカップルっぽくって急に恥ずかしくなって俯きながらボソッと答えると、修平は微笑みながら俺の顔を覗き込んだ。
「じゃあ、せっかくだから映画行ってお茶して……ホテルとか行く?」
ホ、ホ、ホテルだと───…!?
びっくりして目を丸くしながら顔を上げ、そのまま固まっていると修平はクスクス笑ってまた耳打ちする。
「嘘。抱くなら素顔の千秋がいいからデートしたら家に帰ろうか。途中で化粧落としたら姉貴に勘ぐられるかもしれないしね」
な、なんだよ。行かないのかよ……。
ドキドキし損のような……なんかがっかりしたような、ホッとしたような、不思議な気分で修平に手を引かれるまま映画館に入っていった。
そして、今流行っているアクション系の映画をみる。
観たのはスピード感溢れる映画で観てるだけですかっとした気がした。
そのあとは前みたいに男同士なら行きにくそうな、お洒落なカフェに行く。
前に食べたケーキも美味しかったけど、今日食べた宝石を散りばめたようないちごのタルトもすげー美味くて、前みたいに修平といろんなことを喋ったんだ。
そういう楽しい時間ってやっぱりあっという間に過ぎていく。
……それらを食べ終わって店を出ると、修平が俺に尋ねてきた。
「このあとどうする? もう帰る?」
正直、まだ帰りたくない。でも早く着替えたいっていうか化粧も落としたい。
けど、やっぱりまだ帰りたくなくて修平の袖をつかんだ。
「……まだ帰りたくない」
「じゃあ、どこ行く?」
行きたい場所なんてのはないけどまだ帰らずに修平とブラブラしたくて袖をつかんだままいると、修平が微笑みながら俺の顔をのぞき込んだ。
「じゃあ、僕の買い物付き合ってくれる?」
「うん、行く!」
すると修平が歩きながら手を差し出したので、照れ臭かったけど俺も手を差し出した。
もう二度としないと思ってた女装だけど、自然と手をつなげるなら甲斐がある。
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