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20.ねがいごとひとつ 10
修平のあとについて恐る恐る中に入っていったものの、部屋の中は想像よりもかなり普通で拍子抜けしてしまう。もっとこう、ピンクピンクした照明にベッドだけドーンとあるのかと思ってたけど、ソファにローテーブル、でかいテレビにゲーム機まで普通の部屋みたいだ。
「ベッドが回ったり、鏡張りとかじゃないんだ……」
「そういう部屋がよかったの?」
「よ、よくないっ!」
全力で否定すると修平はクスクス笑って、ソファに座るように言った。
「こっち来て」
軽く手を引かれてソファに座らされると、修平はカバンの中から何やらビニール袋を取り出す。
その中に入っていたものはウェットティッシュのようなもので、それを取り出すと俺の顔に近付けた。
「何それ」
「シートタイプの化粧落とし」
「シートタイプ? そんなの持ってたのか」
「さっき買ったんだよ」
さっきって……いつの間に。
修平はそれを1枚取り出すと俺の顔を丁寧に拭いていく。
何枚か使って拭き終わると洗面台で軽く水洗いするように言われたので、言われるままに洗面台へ向かった。
洗面所まで来てまだカツラをかぶったままだったことに気付き、カツラを脱いで台の上に置く。
蒸れていたからすっとして、その爽やかさのまま顔を洗った。なんとなく拭き取っただけでは気持ち悪かったから、水洗いするとスッキリして気持ちがいい。
やっと素顔に戻れて肌が軽くなった気がする。
洗い終わって周りを見渡してみると、そこはいわゆる脱衣所的なところで、バスルームと繋がっていた。
ラブホテルの風呂ってどんなだ? って覗いてみたけど、やっぱりここも普通なんだな……。
もっと凄いのかと思ってた。口から水が出るライオンとかさ。
すると部屋から修平がやって来ていきなり後ろから抱きつかれた。
「洗えた?」
「う、うん……ッ…ん……」
振り向きざまに修平にキスされると、少し開いた隙間から舌が割入ってくる。
「んっ……ッ…ン……」
いきなり合わさった唇が離れると修平は目を細めた。
「あとで風呂でもしようね」
ニッコリ微笑みながら手を引かれていってるけど、あとって何?
そんなことを思っていたらベッドの上に組み敷かれていた。
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