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20.ねがいごとひとつ 25

そんなこと信じてもらえるだろうかと少し不安ではあったけど、基本的に内川は修平の話は信じるし、修平も堂々としてるから、次の瞬間には「大変だったな」と内川に励まされるように肩を叩かれていた。 「新藤の姉ちゃんって、ヘビーなことすんだな」 「うん。変わってると思うよ。残念な姉なんだ」 咄嗟に修平が姉ちゃんの指定した罰ゲームということにしてくれたお陰で内川に誤解されずに済んだようだけど、ホッと胸をなでおろしながら場が納まりかけたその隣では、心底がっかりしてる奴がいた。 「……柏木くんの女装、可愛かったからもう1回見たかった」 えらく落ち込んだ塚本だったがすぐに何か思いついたのか例のノートを取り出してニヤニヤし始める。 「あ……強制女装……フフッ、フフフ」 なんだよ、強制女装って! いやいや、塚本さん。 それちょっとアブナイ人に見えるからって突っ込もうとした時、ガタッと立ち上がったのは内川だった。 でも、その顔は何やら怒っているようにも見えて……。 「ま、ま、また柏木かよっ!」 いきなりだったから、俺も修平も塚本も驚いて固まってしまう。 そして内川は塚本の両肩をガシッと掴んだ。 「もう柏木の観察は終わったんだろ? 今は俺だろ? 塚本はさ、俺と柏木とどっちが好きなんだよ!?」 思わぬ発言に、俺ら3人は固まったまま言葉がなかった。 あの……、内川くん? 君は何、馬鹿なことを真顔で言っちゃってんの? すると塚本の顔がみるみるうちに真っ赤になって久しぶりに鼻血を吹き出し、そのままバタバタと退散していってしまった。 「内川、お前バカになったのな……」 「な、なんだよ!?」 俺がため息混じりに今度は内川の肩を叩くと、すかさず修平が割り込む。 「僕は内川くんの気持ちわかるな。誰だって好きな人には馬鹿になっちゃうんだよ、ね?」 「やっぱり新藤は俺の師匠だ!」 そう言って内川は修平と肩を組んでたけど、修平は面白がってねぇか? なにが、ね? だ。 でも修平は、ほんと……バカだ。 俺がまた顔を赤くしてることを横目に見ながら修平は愉しそうに笑っていた。

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