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20.ねがいごとひとつ 26
俺もいつかは修平の顔を恥ずかしそうに真っ赤にさせてみたい。
今は、明らかに俺の方がからかわれてばかりだけど。
でも最近は前より修平に完敗ってわけじゃなくなったんじゃないか?
修平の照れた顔も見たことないわけでもねぇし。他にもいろんな表情を見てきた気がする。
それって多分、前よりもっと修平が俺に気を許してくれたってこと……だよな?
そう考えると凄く嬉しくなってきた。
「修平、ちょっと来い!」
修平の腕を引っぱって本校舎の非常階段に出ると、そのまま一番上まで上がっていく。
「どうしたの?」
ここは、この間偶然見つけた秘密の場所。
俺らが使ってる本校舎は学校内でも一番高い建物で、その北側にある非常階段の一番上は周りの校舎からは死角になることにこの間気がついたのだ。
「ほら、しゃがんでみろよ」
修平の手を引いて一緒に座ると、俺は修平のネクタイを軽く引き寄せてキスをした。
チュッとリップ音が響いて唇を離すと、そこには心底驚いた顔をした修平がいて、しめしめと思う。
「ここ死角。こないだ見つけた」
得意気に話すと、修平はしてやられたって表情だけど、どこか嬉しそうに目を細めて俺の頬に触れた。
「驚いた。学校で千秋からキスされるなんてね」
「ここなら見えないからいいんだよ。それに、俺だって俺からキスしたいときだってあるんだからな」
「そう言われると凄く嬉しいよ」
そして俺は頬に触れる修平の手を握りしめた。
「受験勉強、俺頑張るから。修平と同じとこは無理だけど、同じとこ受けるくらいの気合いで頑張るからさ。大学受かったら一緒に住んでくれよな!」
受験の話をするのはまだもう少し先のことだけど。
いろいろあったからこそ、これからも修平と一緒にいたいって気持ちが高まった気がする。
「僕が教えるから大丈夫だよ」
修平が笑ってそう言ってくれるだけで、不安が消えていくのは不思議だ。
そして、お互いに見つめ合うとまた自然と重なっていく唇……。
どちらからともなく絡み合わせた舌の感触が気持ちよくて安心して、やっぱり修平じゃなきゃだめだって改めて思った。
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