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20.ねがいごとひとつ 27

「……修平、好きだよ」 唇を離したとき口から出た言葉に、また修平は驚きを隠せない表情をしていた。 なんか今日の修平は驚いた顔が多くて、気分がいい。 そして表情を綻ばせた修平が俺のことを抱き寄せる。 「今日はなんか素直だね」 「……たまにはいいだろ」 「そうだね」 今日は妙に素直だなって、自分でも思っていた。 いつもなら無駄に突っかかったりするくせにな。 抱き締められる力を強く感じながら、俺も強く修平を抱き締めかえすと修平が耳元で囁く。 「一緒に頑張ろうね」 修平の胸の中でコクンと頷きながら、俺も内川のことバカに出来ないと思った。 俺はやっぱり単純だから、修平がいるだけで俄然勉強だってやる気になるし、修平の言葉一つで自信持ったり安心したりするからだ。 「うん、頑張る」 好きって気持ちだけで、こんなにも意識が変わるのって凄いことだと思うんだ。 もう自分ですら最初は修平のことが大嫌いだったなんて信じられないくらいにコイツが大好きで大好きで堪らなくて。 修平といつまでも一緒にいたいと思ってる。 勉強は苦手だけど、修平に恥ずかしくない自分になりたいから少しだけ頑張ってみようって。 いや嘘、少しじゃなくて必死に頑張らないとだめなんだけど。 「修平、勉強教えてくれるときさ。ご褒美制にしねぇ?」 「ご褒美制?」 「うん。テストで何点以上とれたら……とか」 「その方がやる気出るの?」 「出る! 出まくり!」 すると修平はクスクス笑うといいよと言ってくれた。 「で、ご褒美は何がいい?」 だから俺は修平に内緒話するみたいに、耳元で囁くように小声で言った。 『修平の女装が見たい』 そう言ったあとの修平ときたら、鳩が豆鉄砲を食らったように目を丸くしていて、初めて見るその表情に俺は笑いが抑えられなかった。 「嘘だよ。本気にした? 修平のそんなに驚いた顔、初めて見たかも!」 腹を抱えるように俺が笑っていると、修平は顔を背けてしまった。 それから何も言わない修平に、怒ったのかな? って思って、腕を軽く引っ張ったけどこっちを向こうとはしなくて、俺が少し焦り始めたときに、ふと修平の髪の隙間から赤くなった耳が見えた。

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