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番外編⑤ 腐女子彼女と親友たちの日常 4
「柏木、大丈夫か?」
すると新藤はそんな柏木のことは気にせず、にっこりと微笑んだ。
「どうしたの? 急に」
「いや、なかなか前に進めなくて……新藤にアドバイスしてもらおうと思ってさ」
「でも内川くんだって経験ないわけじゃないだろ?」
「そうなんだけど……なんて言うか」
するとさっきまで咳き込んでいた柏木が横から首を突っ込んできた。
「お前さ、経験あるとか言って本当は童貞なんじゃねぇの?」
「柏木と一緒にするな! なんか……塚本さんって今までの子とは違うっつーか、迂闊に手を出したくないし大切にしたいけど……やっぱ手とか繋ぎたいし」
何となく纏まらなくてグダグダになったけど、新藤は頷きながら聞いてくれた。
「あぁ、なるほど。そんなのこうやってグイッと握ってしまえばいいじゃん」
そう言うと新藤は柏木の手を取って恋人繋ぎをして見せる。
「おい、バカ! やめろ」
いきなり自分が彼女役をさせられて照れたのか真っ赤になった柏木が怒って手をはねのけたものの、新藤は相変わらず微笑みながら続けた。
「僕はこんな風に最初は付き合う前だったけど、家に連れ込むときに繋いだよ」
「彼女嫌がらなかったか?」
「最初はね。でも、その後一晩中好きだって言い続けたから……」
「ブオッフォッフォッ」
また柏木がむせだすも、俺も無視して話を進める。
「新藤って強引なんだな」
「僕ね、意外と強引だったりするんだよね」
相変わらず咳が止まらない柏木の隣でニヤリと微笑む新藤。
「強引にいって嫌われたらどうしようってならねぇ?」
「嫌われたくはないけど、気持ちを言葉と態度で精一杯伝えてダメならしょうがないよね。でもたまには強引にでも自分が進まないと何も変わらないよ」
そこまで言うと新藤は俺の耳元に顔を寄せて小声で続けた。
「実は今の恋人のファーストキスも強引に奪っちゃったんだよ」
「マ、マジでか!?」
「マジマジ。そこは頑張って骨抜きにさせるとこでしょう」
「ほ、骨抜きって……新藤ってやっぱすげーな」
俺がいきなり大声を出すものだから、不審に思ったのか柏木も顔を寄せてきて話を聞きたそうにした。
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