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番外編⑤ 腐女子彼女と親友たちの日常 6
塚本さんが持つシャーペンは今日もせわしなく動いていた。
「塚本さんはさ、総受けとか総攻めとかしか書かないの?」
「そんなことないよ。普通のカップルの話も書くよ」
「そうなんだ。意外……」
ずっとその話が主だったから、そういうのしか興味がないのかと思っていたけど、普通のも書くんだって思いながら相槌を打つと塚本さんが顔を上げた。
「総受けとか総攻めって登場人物が多いから私は書くの難しいの。だから練習にもなると思って」
「じゃあ、普通の場合も身近なモデルいるの?」
「そうだなぁ……。柏木くんとか多いかな。可愛いし」
また、柏木か……。
塚本さんはそんなつもりで言った訳じゃないのはわかっているのに、なんだか胸がズキズキしてモヤモヤしてくる。
だから、余計にどんな事を想像してるのか聞きたくなってしまう。
きっとこういうのって後で聞かなきゃ良かったって結果になるに決まっているのに、気になって仕方ないのだ。
「柏木の総受けの時ってどんな話書いてたの?」
すると塚本さんはにっこりと笑った。
「えっとねぇ、王道だと男子校に柏木くんが転校してきて、生徒会長の新藤くんに目を付けられり、寮の同室の内川くんと仲良くなったり、風紀委員長とか不良とかにとにかく柏木くんがモテまくる話とかいろいろ」
「新藤って生徒会長って設定なんだ〜」
「うん。優しくにっこり微笑みながらも狙った獲物は逃がさない策士の腹黒生徒会長だよ」
「まじか、新藤が腹黒ってイメージないけど」
「普段、物腰優しい人が実は腹黒い策士だったりすると萌えるんだよね」
塚本さんは楽しそうに笑いながら話していた。
「メインの攻めは新藤くんでね、柏木くんのことを好きになって最初は無理やりなんだけど、そこからだんだん柏木くんの方も新藤くんが気になっていくって話なの」
「へぇー。じゃあ、俺のは?」
「内川くんがね、風紀委員長になって風紀を乱す生徒にお仕置きしていくんだよ」
「俺、平の生徒から出世してんじゃん」
「もちろんだよ」
そう言って笑いながら、またノートに視線を落とす仕草は本当に可愛いと思う。
でも、やっぱり俺は複雑な思いを抱えていた。
BLに関しては付け焼き刃の知識しかないけど彼女の話題について行きたくて、今では用語的なものはなんとなく理解している。
だからこそわかるんだけど、総受けとか総攻めってのは所謂ハーレムってやつだから不特定多数とアレってやつだろ?
だから塚本さんは、俺が他の人とヤったりするの想像しても気にしないのかな……って、そんなことを考えてしまうんだ。
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