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21.新たなはじまり 3
──────はぁ!?
一瞬、耳を疑った。
「何、言ってんだ? 修平は国立だろ?」
「いや、さっき会ったとき進路希望の紙見てきたんだぜ。先生もすげー焦ってた」
「んなわけねぇよ。……ちょっと俺、聞いてくる」
席を立って修平のクラスに向かった。内川が会ったということは修平の面談も終わったのだろう。
修平の進路は国立大のはずだ。それが俺と同じところなんてありえねぇし。
「修平、ちょっと来いよ」
自分の教室で帰る支度をしていた修平を呼び、ちょっと寒いけどゆっくり話すために非常階段の一番上で話をすることにする。
「進路、変えたって?」
「あぁ、そのことか」
「そのことかじゃねよ。なんで国立やめたんだ」
「千秋と同じ大学通いたいから」
修平は案外ケロッと言ってのけた。
「そんな、お前頭良いのにもったいないだろ!」
「大学にあまりこだわりはないよ」
すると修平は少し伏し目がちに俯くと少し寂しそうな声を響かせる。
「千秋は一緒に大学通いたくないの?」
そりゃ、俺だって一緒に通えたらいいなって思う。
……思うけど。
「そりゃ一緒に通えたらいいなって思うよ。でも、ダメだ」
「どうして? 勉強はその気になればどんな環境だって出来る。でも、僕は千秋と一緒に過ごすことの方が意味があるんだ」
……そうだった。修平はこういう奴だった。
頭良いくせに物事を俺中心で考える癖があって、今までも教師から信頼されている立場を利用して俺中心でいろんなことを陰でやってきた前科もある。
それに乗っかってしまえば4年間、すごく楽しいだろう。同じ講義受けたり、ゼミとかサークルとか。
俺だって四六時中一緒にいられるものなら一緒にいたいと思う。
……でも、俺が目指す大学は修平の可能性を狭めてしまう気がした。
この1年必死で勉強してわかったことがあるんだ。
勉強していろんな知識が増えるってことは一段一段階段を上っていくような感覚で、知識が増えるたびに視界が広がる気がした。
一段上るだけで景色は今までより色鮮やかに遠くの方まで見えた。
そんな風にどんどん変わっていくような。大げさかもしれないけど。
修平は昔から頭がいいから、目の前に広がっている景色が最高の景色なのに、それに慣れてしまっていて気付いてないんだと思う。
そこから降りてくるなんて、何してんだよ……。
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