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21.新たなはじまり 5

バイト先は自転車で20分ほどのところにある喫茶店。 レトロな内装の個人経営の喫茶店でマスターは父親くらいの年の人。 このマスター、コーヒーを入れるのがめちゃくちゃ上手い! コーヒーってちょっと苦手だったんだけど、大学入学してすぐくらいの時に偶然入ったこの喫茶店であまりにも良い香りがするものだから思い切って飲んでみたらハマってしまった。 普通のコーヒーはもちろん、マスターはラテアートなんかも上手いので客層は女子大生から年配の常連おじいさんまで幅広い。 そんな俺も今はラテアートでハートを練習中。まだ歪な形だけど、最近はなんとなくハートらしき形になってきた。 店に着くと手早く準備を整える。 制服ってのはないけど、黒かベージュのチノパンに上は白いシャツならなんでもよくて、その上に店のロゴが入った黒いエプロンをする。 「おっはよーございまーす」 「千秋くんおはよう。今日も元気だね」 ニッコリ微笑むマスターに声をかけられた。 俺もにっこり笑って仕事に取り掛かる。その日も開店と同時にお客さんがたくさん来て忙しい。 じっとしているより体を動かしている方が好きだからいいんだけど、今日は平日にもかかわらずお客さんが多いように思う。 それに加えて先週、長年勤めていた人が1人辞めたので余計に忙しくも感じていた。 マスターは求人広告を出したと言っていたけど、はやく次の人が決まればいいなぁなんて思いながら働いていた。 その日の昼休み、マスターが作ったまかないのナポリタンをカウンターで食べていると、マスターが思い出したように言った。 「そうだ、千秋くん。明日から新人が入るんだけど、君に教育係をやってもらおうと思ってるからね」 「お、俺が教育係!?」 「教育係っていってもそんなに大そうなもんじゃないよ。仕事の流れを教えてくれたらいいから」 「新人ってどんな子? 男? 女?」 「大学生の男の子だよ。女の子じゃなくて残念だったかな?」 「いや、別にそうでもないですけど」 そう言うとマスターはクスクス笑って続ける。 「どんな子かは見てのお楽しみにしておいた方が面白いかもね」 ってなわけで、新人の詳細は明日のお楽しみみたいになってしまったわけだけど。 新しいバイトが入ると聞いてわくわくした。 その教育係に俺がなるというのも気分がいい。 その日は午後も忙しかったけど、上機嫌のまま帰ったのだ。

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